文武両道!? 日本のスポーツ界が直面する課題


今年の全米大学バスケットボール選手権を制したのは、ケンタッキー大学だった。



スタメンの5人は、1年生が3人、2年生が2人。
全員NBAドラフト入りを表明。
ケンタッキー大のスタメン5人についてポッドキャストでより詳しく語ってます


競技は変わってこちらは日本のラグビー
高校ラグビーの怪物、そしてセブンズ日本代表の藤田慶和選手が18歳7ヶ月で史上最年少キャップを獲得することが確実となった。



サッカーでも大学選手が最近では注目されるようになってきたが、それは全て育成という文脈で紹介されるもので、学業や将来のキャリアなど他の側面で語られることは皆無である。
例:ナンバーの記事


選手育成に重要な大学。しかし、4年は長い!〜望まれる短大卒のJリーガー〜


では一体、大学でスポーツを行うということは日本のトップスポーツの強化を考えるに当たって、何の意味があるのだろう?
野球というスポーツにおいては、大学スポーツの意義は比較的クリアだろう。
高校時点でプロに入る可能性があればほぼ間違いなくプロに進み、実力がなければ大学に進学し腕を磨く。
(もちろん過去には斎藤佑樹選手や江川のように例外もある。)
サッカーも上記の記事通りほぼ同じ流れになり始めている。
大学卒業時点でプロ入りが叶わない場合は、社会人に進んでさらに続けるか、その時点で夢をあきらめ一般企業に就職する。
これが大体のケースだろう。


しかしこれがラグビーとかになってくると、日本代表の強化という視点から考えた場合に、今の日本では大学スポーツの意義がわかりにくくなってくる。
オールブラックスにも選ばれ、日本でも活躍したトニー・ブラウン選手曰く

僕は、日本のラグビーは、大学に問題があると覆っている。

ニュージーランドでは、その年齢でもうオールブラックスになっている選手も多い。

だけど、日本の場合、高校生はとてもいいラグビーをしているけれど、大学に行っている間にレベルが停滞してしまって、4年経って社会人に進んだとき、レベルのギャップに苦しんでしまう選手がほとんどだ。

大学が終わってトップリーグに入って、2〜3年かかってやっとトップリーグでプレーできる能力を身につけたときには、もうトシをとってしまって、キャリアが短くなってしまうのが現状だ。

どうせ日本の選手は、たいてい大学に行っても勉強してないじゃないか?

勉強をしたい選手は、トップリーグのチームに所属しながら大学に通えばいい。

それはニュージーランドでもフランスでもイングランドでも普通にやっていることだ。


参照:書評:オールブラックスが強い理由




NBANFLではアーリーエントリーと言って、卒業をする前にプロへ行く選手が当たり前のようにいる。
過去にはマイケル・ジョーダンシャキール・オニールなど大物が絶えない。
もちろんその光の裏側には、早熟なままプロへ進み大成しなかったケースもこれまた絶えない。
しかし貧しい生活からの脱却を要する金銭的な理由や、自信過剰な場合など様々なケースがあれど、一つ日本では聞かれないケースがアメリカにはある。


こちらをご覧下さい!

THE BIG EXECUTVIE? SHAQ MASTERS MBA


写真を見れば充分理解できると思う。
昨年引退したNBAのスーパースター、シャキール・オニールMBA授与の時の記事。
アーリーエントリーで1992年にNBA入りしたシャックは、2000年に母校LSUを卒業し、その後は2005年にMBAを取得、もう間もなく博士号も取得するそうだ。
彼はNBAでプレーしながら、オフシーズンや通信教育を経て単位を取得していたのだ。


シャックの場合はかなりレアなハイレベルな事例だが、そう日本のアスリートには、復学、もしくはトップリーグに所属しつつ学ぶという概念が存在しないのだ。
この選択肢があるのとないのでは、その後の人生の選択の幅にかなりの差が生じるのではないだろうか?
アメリカでは人生のセーフティネット、保険の機能が存在するのだ。
もしくはこれは使いようによって、攻めのキャリアアップとしても使える選択肢かもしれない。
ケンタッキー大学のスタメン5人も全米を制して夢と希望に溢れている状態だろうが、同時にシャックのような存在はきちんと認識しているだろう。



単純に考えてみよう。
あなたが企業の人事採用の担当で、清原和博長谷川滋利が履歴書を送ってきたとしたらどちらを採用するだろうか?
書面上は大卒の長谷川投手の方が有利だろう。
しかし、引退後もし清原選手が大学に進学していたらどうだろう?
これはかなり極端な例だが、このオプションはケガで芽が出なかった選手にとっても有効だろうし、トップリーグで活躍した選手にも有効だろう。
それを実践している少数が桑田真澄であり、カープの東出選手であり、バスケのJBL優勝チームのトヨタ所属岡田選手だろう。

野球を学問する

野球を学問する


ちなみにサッカーの昨年の登録抹消された選手の進路はこのようになっているそうだ。


J抹消選手103人中47人現役続行 就学・復学は7人
 Jリーグは17日、東京都内で理事会を開き、昨季戦力外などにより登録を抹消された選手の進路状況で、103人のうち47人が現役を続行したことが報告された。移籍先は日本フットボールリーグ(JFL)が15人、海外リーグが17人、地域リーグが15人だった。一昨季の登録抹消選手は147人で、75人が現役を続けた。

 国際サッカー連盟(FIFA)が運営する大学院に進む元日本代表の宮本恒靖氏ら就学・復学が7人、Jリーグクラブやサッカー関連の就職は26人、一般企業への就職は9人、未定は14人だった。

スポニチより


このまま日本のスポーツ界で藤田選手のようなケースが出てくると、(出てくることを願うのだが)必ず大学へ進学する意義が問われるだろう。
藤田選手は日本ラグビー界のためだけ考えれば、トップリーグに所属した方がパフォーマンスが伸びるに決まっている。
しかし、人間として考えた場合に、18歳で大学教育を受けずにトップリーグに行くことがベストかどうかはわからない。
仮にケガをしてしまったら彼の人生はどうなるだろう?
高校時代の名声は忘れられ、ただの社会人ホープのままで終わってしまう可能性もなくはない。
そうなった場合の企業採用を考えてみればいい。
なかなか厳しい現実が待っているだろう。
やはりそうなると答えはシンプルで、選択肢があるほうがいいのだ。


そして日本の場合は、もっと前例が増える必要性があるだろう。
そういった意味では影響力のある清原のような人物には是非大学に入学してもらいたい。
同じく大魔神佐々木には是非大学院に進んでもらいたい。
サッカーで言えば前園のような存在にも是非大学に行ってもらいたい。
それがひょっとすると、どんなホームランよりも、どんなセーブよりも、どんなゴールよりもスポーツ界のためになるかもしれない。
なぜなら後続のアスリートのための道筋を敷いてあげることになるからだ。


個人でビジネス活動をするにしろ、何にしろ、PCのスキルは必要だろうし、社会の基礎的な学力があったほうが、解説だろうが、記事を書くのだろうが役に立つはずだ。
そうすることで日本のスポーツジャーナリズムのレベルが上がるだけでなく、アスリートのステータスも上がり、その結果再就職の間口が広がるのではないだろうか?
日本のスポーツ界の現状を鑑みた場合に、サニーサイドアップに面倒を見てもらって、その後タレント兼解説者として成功できる選手は一握りだろう。
各競技の市場規模が拡大しない限り、スポーツ紙やスポーツ番組の解説者の椅子には限りが出るのだ。
ましてや何でもジャニーズタレントをスポーツ番組に持ち込む国である。
ポッドキャストにてジャニーズのスポーツに体する影響力を徹底議論!
競争は激しいのだからこそスキルが求められる。
そのためには嫌らしいけど現実として学歴があった方が有効だろう。
そして目立つ存在の前例があれば、他のアスリートも続くだろう。


いずれにせよ、競技力向上の面からも、アスリートの人生設計の面からも日本のスポーツにおける大学の存在意義が問われる時代がすぐそこに来ていると思う。
プロの方から、トップアスリートからその流れを変える動きが出ることを期待したい。
遠回りかもしれないが、それが日本のスポーツ界を好転させる鍵を握っているかもしれない。


最後に日本のスポーツ界の賢人からの言葉を紹介して終わりたい


名門校の教育現場にでは「ライン」がつくられていることもあるだろう。
中学、高校、大学と連なる線。
ただ、人生そんな直線だけじゃないだろうと僕は思う。
右へそれ、左へ外れるときだってあるだろう。
「ここへ行くにはこうしなくてはだめ」とプログラム化されすぎると少しかわいそうになる。
大学であれ、トップチームであれ、そこが終着点じゃない。
ほんとに大事なのはその「先」。
その先に開けている世界が一番大事なはずなんだ。

三浦知良
2012年4月27日 日経新聞より




ポッドキャストもやっています!

「スポマン JAPAN!」


毎回素敵なゲストを迎え、様々なトピックを独自の視点で楽しく、熱く、テンポよく語るスポーツトーク番組。

ケンタッキー大の5人ついて詳しく語っているエピソードはこちら!
http://itunes.apple.com/jp/podcast/di16hui-supoman-japan!-nba/id475113078?i=114091555


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参照:岡田優介のブログ
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