アントニオ猪木 堀内恒夫 鈴木寛 スポーツと政治の資質の関係性

アントニオ猪木と元巨人のエース、堀内恒夫参議院選挙の結果、議員となったそうだ。
誰もが思う事は、名選手名監督ならず、ではないが、スポーツで名を馳せたからといって、そのスキルが政治に転用できるとは限らない。


7月26日付けの日経スポーツ面のアナザービューからの柔道連盟に関する記事を紹介したい。

闘技系の組織の場合、なぜかトップに立つのは元横綱、元世界王者、元金メダリストみたいな不文律があるようだ。チャンピオンになる資質と組織を統べる能力はまったく別にもかかわらず。
 現状を憂える柔道家に「もっと出るところに出て意見を言ったら」と励ますと「自分は銅メダル止まりなんで」


道家にはたいへん申し訳ないが、これを読んだ時にまるでライオンかサルの群れと変わらないじゃないか!?と感じたのは私だけだろうか?
ガオーガオー、オレが一番強いからあっちいけー
ウキーウキー、オレが一番強いから言う事聞けー
確かに男子柔道の代表監督は金メダリストばかりだ。
今まで結果も出ていた。
しかし結果が出なくなってきた昨今、このまま動物の群れと同じ行動力学でいいのだろうか?
我々人間には頭脳や言語や様々なスキルがあるのではないだろうか?


さらにもう一度前述の日経からの引用

前歴にとらわれず、スポーツ、ビジネスの両方のマインドを併せ持つ、優れたトップが求められす時代。
そこを見誤るとスポーツ人にガバナンスなんて無理、という寂しいイメージがどんどん一人歩きを続けることになる。


これは明らかにまずい。
それではスポーツの価値がこの国では低いままになってしまう。


そこで考えてみたいのは、アントニオ猪木でも堀内恒夫でもなく、鈴木寛という人物である。
灘中・校でサッカー部に所属し、東大に進学。
通産省に入省した後、大学教授から2001年に参議院初当選。
以降文部科学副大臣などを務めた。




経歴からみてわかるように、この人はサッカー界のチャンピオンでもメダリストでも一番強い人でも何でもない。
ガオーと吠えたところで何もない。
しかし通産省時代に、Jリーグ創設に関わった功労者のようだ。
さらにスポーツ基本法制定の功労者でもある。
超党派の2020年東京オリンピックパラリンピック招致の事務局長も務めている。
ついでにネット選挙解禁の功労者でもあるそうだ。
民主党から立候補したこの人物は、今回の参院選で落選した。
東京都は民主党が候補者を絞って挑んだものの、管元首相が違う候補者の応援に駆けつけるなど混乱を招いた地区である。



アントニオ猪木が当選し、堀内恒夫が当選する。
しかしJリーグ創設の功労者は当選されない。
我々スポーツを愛するものは一体何をしていたのだろうか?
このままでは本当に、

スポーツ人にガバナンスなんて無理、という寂しいイメージがどんどん一人歩きを続けることになる。



最新のサッカー批評鈴木寛氏のインタビューが掲載されている。
そこにえらく感銘を受けた氏の言葉があるので紹介したい。



「僕はJリーグの良いとこは何かって言うと、自分の幸せは自分達で作るということを日本人が戦後初めて、あの規模で成功したという事だと思います。Jリーグ以前はね、北海道ならお上に陳情して巨人戦を札幌円山球場に誘致してくるだとか、そういう上下関係だったでしょう。そうじゃなくて、政令都市でなくても、小さな温泉街でも、自分たちで努力をすればスポーツクラブを作れるんだということになった。がんばれば、東京よりも素敵なスポーツコミュニティが地方でできるっていう、これがすごいところです。今47都道府県で40近くのところでそういうチームが出てきました。そこでは、ただ社会に対する不満や愚痴を言ってるだけじゃなくて、自分たちで苦労しながら、自分達の幸せを掴もうとしている。」



今様々な都市でサッカーだけじゃない形でスポーツの幸せな形を作り始めている。
ナベツネなんかに頭を下げてお願いなんかしなくても、自分達の地域で盛り上がれるのだ。
Jリーグの他では、マラソンが最もわかりやすく、普及して成功している例だろう。
観光庁にはスポーツ観光推進室なるものが存在し、海外に出向いて日本のマラソン大会参加と観光をセットで売り込んでいるそうだ。
少子化や地方の人口減などが問題視される今の日本において、自らの手でスポーツの力を利用して地域を潤すだけでなく、幸せをもたらしていることはある意味画期的なことではないだろうか?
そのど真ん中にいた人間が落選し、ある意味スポーツ界のライオンキングが当選する。
これが今の日本のスポーツの現状であり、地位であり、一般認識だろう。
まだまだスポーツの地位は低いものとしてみられている。
ではこの現在地から脱するにはどうしたらいいだろうか?
やはり産業としてより成熟していく他ないのだろう。
一つ一つのチームが、連盟が、大会がきちんとビジネスとして成立する、黒字になることで初めて人々の認識が変わるのだろう。
そうすると自ずと答えは出てくる。
今スポーツ界に必要なのは、そのスポーツの本質を理解した上で、ビジネスができる人物を増やすことだ。
どうやら教育にも関わることだし、アスリートのセカンドキャリアに関わる問題でもあるし、部活のあり方に関わる問題でもある。
日本の真のスポーツ大国への道は、まだまだ遠い。


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