地域密着型スポーツクラブと部活の未来

日本のスポーツを良くするための最もよく聞くコメントが、「スポーツ・ビジネス(スポーツ・マーケティング」と「地域密着型クラブ」の必要性ではないだろうか?
経営のプロがいない。
学校や企業のスポーツでは発展しない。
親会社の広告宣伝の手段としてのみ使われている。
このように日本のスポーツの将来像を説明する際、現在これらの言葉が救世主かのように一人歩きしている。「日本のスポーツは、卓越したスポーツ・ビジネス知識を身につけた人間による地域密着型スポーツ・クラブ運営によって発展する。」
それぞれ言葉は違えど、現在マスコミで専門家、もしくは解説者と言われている人のいいたいことをまとめるとこんな感じになるのであろうか。

では、部活はどこへ消えた?
そんなに部活が悪いのか?
部活に未来はないのか?
クラブ化ばかりが唱えられている今だからこそ、ここは一つ真剣に部活について考えてみたい。

「スポーツ・ビジネス」と「地域密着型スポーツ・クラブ」。
日本でこれらの言葉が多く使用される源流は、サッカー人気からきている。
特に「地域密着型スポーツ・クラブ」は、紛れもなくサッカーが盛んな欧州、そして南米からの影響である。
4大メジャースポーツを中心にスポーツが動いているアメリカでは、「スポーツ・ビジネス」は発展していても、「地域密着型スポーツ・クラブ」というものは根付いていない。
さらに、日本の多くの専門家のビジネス知識は、サッカーに偏っている傾向も否めない。
これは日本で発売されているスポーツ・ビジネス本の多くがサッカーに基づいていることでひじょうによくわかる。

 残念ながらプロ野球はもちろん(スト前に関して言えば)他分野でのスポーツ・ビジネスに関する本は極めて少ない。
これはどういうことを意味しているかといえば、これらの論調・意見はヨーロッパ社会をベースにしているということである。
ご存知の通りサッカーは、ヨーロッパで生まれ育った歴史がある。
Jリーグの初代チェアマン、川淵氏もドイツのスポーツ・クラブに感銘を受けたことで有名だ。
ヨーロッパのスポーツの発展は、サッカーとクラブを抜きに語れないのである。

それに対し、アメリカは近年人気が上昇しているものの、サッカー不毛の地と言われてきた。
また、スポーツは大学などの学生スポーツを通じて普及した歴史がある。
つまり同じスポーツでも、発展してきたベースが全く違うのである。

では、日本のスポーツ社会をヨーロッパベースに考えていいのだろうか?
残念ながら現状ではそれは厳しいものがある。
なぜなら全国に約3万3千もの学校、そしてその分だけの部活が存在するからだ。
これらの存在を無視していいはずがない。

 

確かに将来的に地域密着型のスポーツ・クラブは必要だ。
しかし残念ながらその道のりはまだまだ厳しい。東京や大阪という大都市に果たして「地域」というものがあるのであろうか?
土地の確保、指導者の確保、金銭的な問題。まだまだ道程は厳しい。

では、どうすればいいのか?少し発想の転換をしてみよう。少し乱暴ではあるが、下記の方程式にあてはめてみると見えてくるものがある。

 ヨーロッパ=クラブ
 アメリカ=部活
 日本=???

日本はヨーロッパ型の社会か?もちろん答えはノー。
ではアメリカ型の社会か?
まー近づいているかもしれないが、ここはノーとしておこう。
ベースが全く違うわけだからそのままやれクラブが必要だ、やれ部活だとばかり喧嘩していても意味がない。
そこで発想の転換である。日本こそが、クラブと部活が最もいい形で共存共栄できる国ではないだろうか? 

日本=クラブ+部活

もともと「いいとこ取り」が得意な国民。
世界で唯一かもしれないクラブと部活の2枚看板によるスポーツの発展を真剣に考えるべきではないだろうか?
いかがでしょう?

  • 続く-

関連記事:地域密着型スポーツクラブと部活の未来9(魅力編)
関連記事:地域密着型スポーツクラブと部活の未来8(交流編その2)
関連記事:地域密着型スポーツクラブと部活の未来7(交流編)
関連記事:地域密着型スポーツクラブと部活の未来6(部員編)
関連記事:地域密着型スポーツクラブと部活の未来5(指導者編その2)
関連記事:地域密着型スポーツクラブと部活の未来4(指導者編)
関連記事:地域密着型スポーツクラブと部活の未来3(理念編)
関連記事:地域密着型スポーツクラブと部活の未来2(7Needs)