地域密着型スポーツクラブと部活の未来 9 (魅力編)

このシリーズでは久しぶりのエントリーなので、忘れてしまった方たちのためにも、現在そして今後も部活が必要とする7つの要素をおさらいしたいと思う。

理念(Vision)・指導者・部員・交流・魅力・資金・施設

今回はその中でも部活の「魅力」について考えたい。


そもそも部活の魅力とは何であろう?
年齢やレベルによって違いはあるだろう。
小学生であれば、単純に楽しむことや友達と一緒に活動することかもしれないし、大学生だと勝つことかもしれない。
しかし、どの世代でも必ず共通する部活の魅力があるのではないか?


私が個人的に共通すると思われる魅力は、スポーツの魅力と同じで、「できないことができるようになる」「成長の実感」この辺りではないかと考える。
それを仲間と共にできるようになれば、それこそ魅力的ではないだろうか?


カーブが投げられるようになった、3ptシュートの確立が上がった、トラップの精度が上がった、トスが正確になった、こういった実感を得る事が大切ではないだろうか?
その上で相手に勝つことができればベストではないか?


この部分を理解できると、指導者や部員も取り組み方がかわってくるはずである。
いかに選手を伸ばすかに指導者は専念するだろうし、部員もいかに成長するかを自ら考えるはずだ。
つまり目標を設定できるようになる。
取り組み方がかわれば、目の輝きも違ってくる。
学生もばかではないので、敏感にそれを感じ取れる。


少子化でなおかつ欧州やNZなどのように地域密着型のクラブがない日本では、スポーツとの一番最初の出会いは部活になるかもしれない。
だからこそ出会いがいいものでない限り、将来のスーパースターは違う道を選択するかもしれない。
出会いの魅力が将来のその競技の未来を決定付けているといっても過言ではないかもしれない。
横浜のとある公園でタグラグビーが爆発的に流行し、そのまま女子ラグビー界の主力が誕生したケースは奇跡として捉えたほうがいいだろう。


指導者がただスパルタであったり、部員がただやらされているだけのような環境は、必ず見抜かれてしまう。
魅力がないからこそ目的もない。
逆にそこが魅力的な部であれば、当然参加したくなる生徒、応援したくなる生徒の数も増えてくる。


スポーツの魅力の根本を理解することで、もう一つ違う側面でも大きな効果がある。
それは、この練習が「できないことができるようになる」ためのものだと信じる事ができれば、生徒はどんな厳しい練習にも耐えられるし、全力で取り組める。
成長するために、我慢すること、自らをコントロールすること、コミュニケーションを取ることなど様々なことができるようになってくる。
そうしてレベルを上げていきながら勝利することを覚えていくだろう。


指導者も現在何ができて、何ができないかをきちんと把握することで、適切な指導ができるだろう。
地区大会1回戦の実力しかないのに、全国優勝チームと同じ練習と量をこなせばいいものではないだろうし、逆に全国大会へ行く実力があるのに、先生の意地で体力練習ばかりさせても意味がないだろう。
指導者もできないことができるようになることが求められてくる。
つまり指導のレベルもあがるはずだ。


スポーツの魅力は何だろう?
「できないことができるようになる」という一つの考えを提示したが、レベルによって、チームによって、個人によって他にも様々な考えがあるだろう。
部活に、特に指導者がその魅力が何であるかという認識があれば、あなたの部活もきっと充実したものになるに違いない。
逆にもしない場合は、一度その部活の魅力が何であるかを考えてみるといいかもしれない。


情報が溢れて少子化である現在、お手軽で魅力的なものがたくさん子供たちの周りに存在している。
選択肢ならいくらでもある。
部活が魅力的でなければ、部活に参加する生徒が激減してしまうかもしれない。
そうなる前に部活も魅力的なものであって欲しい。


今回のテーマは、部員の減少や部活の理念、指導者などのテーマと密接につながっている。
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