書評:PLAY ON!日本ラグビーのゆくえ


ラグビーワールドカップがNZで開催されている。
ここ最近個人的に少しでも盛り上げるべくずっとラグビーモードを貫いているが、二つの関連ワードでの検索がとても増えている。
一つは、「オールブラックス
そして残念ながらもう一つは、「ラグビー協会 問題」というものが多い。
今日日本代表はトンガ戦との大一番!
今年パシフィックネーションズで勝利しているとはいえ、トンガがベストメンバーではなかったことを伝えている記事も見受けられた。
とはいえ、ここまで来たらとにかく応援しなければならないものの、この「ラグビー協会 問題」ということに関して、もう一つの協会(狂会)の存在を通して紹介していきたい。


日本ラグビー狂会をご存知だろうか?

彼らの声明文によると、

「面白いラグビーが観たい」というシンプルな要求においてのみ結びついている集団です。面白いラグビーをスポイルする全ての動きに対して反対しますが、その場合はフェアプレイとユーモアの精神で格調高く語ろうというのが唯一の規約です。


この集団は何人ものライターで構成され、過去に何冊も日本や世界のラグビーに関する本を出し、常に熱い魂を持ったラグビーファンの心を代弁してきた。
個人的に印象深いのは、1995年オールブラックスに145対17で敗れた後に発売された一冊だ。
この時のジャパンへの痛烈な批判とそこからの熱い提言というか心の叫びのような内容は強烈なインパクトがあった。

ラグビー黒書―145点を忘れるな!

ラグビー黒書―145点を忘れるな!



常々思うことだが、この狂会の存在は、他の競技からしてみれば、ひじょうにうらやましい存在だ。
現在の日本のバスケットボール協会のように訳のわからないことを多くやってきたても見過ごされてしまう競技が多い中で、きちんと意見を述べてくれるメディアの存在はありがたいことだ。
そんな狂会の努力の甲斐もあってか、日本のラグビー界はJKの手によって少しずつよくなってきたと言えるだろう。
そして今日がその集大成の試合かもしれない。
しかしJK前の迷走ぶりを知るファンに取っては、大会後に不安を感じている人は多いはずだ。
そこで一度時計の針を2005年12月(出版日)に戻してみてみたい。
そしてその時の状況に戻らないことを願おう。



PLAY ON!日本ラグビーのゆくえ

PLAY ON!日本ラグビーのゆくえ


この本の大まかなテーマは、
1.代表の迷走ぶり
2.協会の迷走ぶり
3.高校ラグビーの現状
4.早稲田と明治の現状
5.来日した外人に関する歴史のお勉強とオフサイドルールについてのお勉強


1.と2.に関しては、当時の協会筑波トリオ(真下、河野、勝田)を痛烈に批判。
責任があいまいな上に、実行力がない、学者さんの机上の空論だけでは進歩がないというところか。
3.では指導者やスタッフでの派閥の影響とラグビー界の強烈な閉鎖性をレポートしている。
4.を読んで私の一つの発見は、清宮克幸に対しての見方が少し変わったことである。
清宮元監督は、優秀な監督兼プロデューサーであることは間違いない。
私はその点を認めつつも、彼にもっと崇高な学生スポーツの理念を打ち出して欲しいこと、及び持続的な成長が可能な部活動のあり方を追及して欲しいと思っていた。
そんなことはないだろうと思いつつも、勝利至上主義者(勝利のために手段を選ばない)なのではないかという不安があったのだ。
しかし本を読むと、彼が若年層のスポーツ離れを心配していることや、トップリーグの選手のセカンドキャリアを心配していることや、推薦の選手と一般入試で入部している選手が混在している状況が望ましいと思っていることや選手が様々な進路に進んでいることに満足している様子が伺えることを読み取ると、少し安心した。
一方で2005年時点の明治大学ラグビー部だが、ここは読む限り重症のようだ。
OB会による運営の限界が見えてくる格好の例であろう。
その延長が日本ラグビー協会のような気がしてならない。
きちんとした組織ではなく、OB会なのであろう。
現在は吉田監督を迎えて立て直しの最中だが、近い将来また優勝争いに加わることを期待したい。


これが2005年時の現状。
協会も代表も迷走。
学閥や派閥で閉鎖的。
そして当時の早稲田は清宮全盛期であったものの、好敵手の明治は迷走。
これがJK前のラグビー界。
では今大会後はどうなるのだろう?
JKは監督なのだろうか?
継続的な強化はできるのだろうか?
閉鎖性は解消されるのか?
2019年にワールドカップは日本で開催されるのだが、青写真が見えてこない。
いずれ清宮現ヤマハ監督が日本代表監督になるのかもしれない。
しかしどちらかといえば彼には協会のCEO, もしくはトップリーグのCEO的なポジションをやってもらう方が日本のラグビー界のためになるかもしれない。
いずれにせよ、大会後に日本ラグビー狂会の本がまた出版されるだろう。
その内容がNZでの日本の勝利と明るい未来への提言でつまっていることを祈ろう。


さてこの日本ラグビー狂会の本だが、2005年以降も2冊ほど出版されている。
それらも次回紹介しながら、ワールドカップを楽しんでいきたいと思う。


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