ネットキャンペーンに想う My thoughts on online campaigns

日本の広告市場において、ネットが新聞広告を抜いて2位の媒体になったのは一昨年の事だ。昨年はさらに差が広がったようだ。
しかし、新聞、雑誌、ラジオがそれぞれ5%、9%、5%と減っているのにも関わらず、ネットの伸びが4%しかない。
その内検索連動広告が19%も伸びたようだ。

この数字が物語る事は、日本が現在過渡期に来ている事だと思う。

ユーザー目線から考えて、ネット上だけで完結するキャンペーンや広告には「慣れ」もしくは「飽き」が来ていることは確かだろう。
アバターやゲームも芸能人が登場する特別動画やドラマもいいが、そろそろその先のカタルシスを求めているのは間違いないだろう。

そこでリアルとの連携ということで、ヤフーショッピングでの人気店がデパートと組んでリアル店舗を期間限定で出したとか、ホンダがmixiアプリで車1台当たるキャンペーンしたとか、ユニクロtwitter絡めたセールしたとか様々なキャンペーンが出てきた。
その流れを促進させるかのようにマスコミは5億人突破してからやっとfacebookの存在を知り、煽るようになってきたと思ったら、実績のないはずの日本でfacebookのhow to本が溢れ出した。

日本のマスコミの情けなさはさておき、そして似たようなhow to本がたくさん出ている現状もおいておき、facebookの躍進は、現在の日本にとってひょっとして一番明るい話題かもしれない。
なぜなら、日本のネット広告費を邪魔しているもの、邪魔している存在、彼らに最もわかりやすく、最も理解されるプラットフォームだからだ。

では今なぜ日本の過渡期で、なぜfacebookがそれを変える可能性があるのだろうか?
ユーザーがネット上だけのキャンペーンで物足りなくなっていると書いたが、そうすると困るのは破竹の勢いで進化しているグリーやモバゲーさらにはアメーバになる。
現状これらのサイトはウェブ上でのつながりはあれど、リアルとのつながりはどちらかというと薄い。
それは何を意味するかというと、広告出稿がしにくいということでもある。
考えてみてほしい。
大企業にはたいてい50代、60代もしくはそれ以上のお偉いさんが存在する。
7:3分けの60代引退目前の広告部長に、30代前半の部下が「アメーバピグで4000万円使って盛り上げましょう!」
とか
「部長、2500万円使ってグリーでアバターとプロフを配布してゲームで促進させながら我が社の商品を認知させましょう!」と言ったところで、通じる可能性はどれほどのものか想像してほしい。
いくらグリーに30代、40代の女性が大挙ゲームしているからといって、ピンと来ないのが今の日本の大企業の現状だろう。
もしあまりネットビジネスを勉強していない部長ならなおさらだ。
ヤフーにバナー広告を出してさえおけば、検索連動広告さえしっかりやっておけば、ROIも分かりやすいし、責任も追及されない。
つまり安全地帯にいられるのだ。
営業部に刺されずに済むだろうし、もっと上の役員にも追求されない。
想像してみてほしい、あなたが読売新聞の広告部役員で、ナベツネに「グリーと連携しましょう!」って言えますか?


この点こそが日本の最大の壁といってもいいかもしれない。
そこでfacebookとなるわけだが、facebookはその点個人はもちろん、企業にとっても理解されやすいし、何より入りやすい上に実名が多いからこそリアルに近い。
このメリットは計り知れない。
部長に説明に行くシチュエーションをもう一度思い浮かべてほしい。
アバターやプロフやゲームと一緒に説明するよりはるかに安心だろう。
顔が見えるという事の安心度は思いのほか大きい。


今グリーやモバゲーやアメーバにとって最も求められている事はリアルとの連携だろう。
コカコーラとモバゲーの連携したキャンペーンは中でも最高の切り口かもしれないが、彼らの規模感はなかなか真似しにくいのも事実だ。
過去にこのブログでも一つ事例を書いてみたが、リアルと連携したキャンペーンを見て始めて7:3分けの部長はこれらのサイトのインパクトを知るだろう。
これらのサイトは成功しているサイトであるが、日本の大企業のエスタブリッシュメント、別の角度から見れば「恐竜」と呼べる人たちに理解してもらうことが、今後の日本及びネット界の発展の鍵を握っていると言えるだろう。
そのためには、FeliCaとの連携かもしれないが、商いとの結びつきを強くする必要がある。
そしてユーザーインサイトをより詳細に提供する必要があるだろう。

この壁は確かに小さな壁ではない。
世界中を見渡しても成功している企業は少数と言えるだろう。
しかしこれなくしてはウェブの発展、そして日本の発展はないかもしれない。
頼りない政治家や恐竜と化したエスタブリッシュメントに毒されたこの国が突世界と戦うには、この点を突き詰めないと厳しいだろう。
今そこに一番近い位置にいるのはfacebookのような気がしてならない。

どこの社内にも「恐竜」はたくさんいる。
広告担当は啓蒙活動に必死だろう。
でも不景気と停滞が蔓延っている日本で一番の近道は、ソーシャルネットワークでは計れないかもしれないROIであることは認識すべきだろう。
この難問の先に日本が再び浮上する鍵が在るであろう。
日本の優良企業に躍り出たグリーやモバゲーなどには、その辺りを意識した投資と発展を期待したい。