海外で活躍する日本人トレーナー

ロンドンオリンピックでは、いかに科学的なトレーニングとサポートが受けられるかによって、パフォーマンスに大きな差が出ることが広く知られた。

374億円をかけて創られたナショナルトレーニングセンターの効用が大きく取り上げられ、日本のスポーツ界もついに根性だけの甘酸っぱいセンチメンタルな香りから、成熟した知恵と技ありきの根性が求められるようになってきた。

そんな中フィジカルコーチの存在にも多少スポットライトが浴びせられるようになってきた。
訴訟社会のアメリカの部活では、ライセンスを取得したアスレチック・トレーナーがいることが法で義務づけられており、選手のリハビリからトレーニングまでサポートできる体制が作れている。
これはアメフト人気から来ている流れが強いこともあるが、アメリカはフィジカルなスポーツ、アメフトの発展とともにスポーツ医学とトレーニングが発展してきた歴史がある。
日本では部活にライセンスを持ったトレーナーがいることなどまずないのが現状だ。
従って、まだ根性だけ押し付けて、正しくない体の使い方などを指導している人間がいる可能性が高いのだ。


しかし、先進国アメリカとの大きな差をものともせず、世界で活躍している日本人トレーナーはたくさんいる。


女子テニスのスター、マリア・シャラポワを支えるのは中村豊氏。


ACミランを10年以上支えているのは、遠藤友則氏。


2008年欧州選手権でドイツ代表を支えたのは、咲花正弥氏。


NFLで活躍するのは磯有理子さん。


NBAでは佐藤晃一氏



中でも今回注目したいのは、ロンドン五輪サッカー韓国代表を支えた池田誠剛氏。

日本のJリーグでフィジカルコーチをしていた池田氏は、柏や湘南(当時平塚)で活躍していた洪明甫五輪監督と出会う。

Kリーグではいまだにフィジカルコーチは一人もおらず、コンディション作りやトレーニングを体系的に教える文化がない韓国サッカー界に池田氏が必要と感じた洪監督は、まず2009年U20を指導している時に臨時コーチとして招聘する。

その流れから今回のロンドン五輪に向けて2011年1月から正式契約したようだ。

しかし「待てよ」とも思う。

韓国には、フース・ヒディング時代に経験した最大の宝物があるはずだ。

ヒディング・サッカーは激しい運動量に拠るところが大きい。

オランダでも、韓国でも、ロシアでも常に高い運動量と流動性の高いサッカーで結果を残してきた。

その源は、オーバーロードレーニングという手法にある。

[http://number.bunshun.jp/articles/-/184118?page=3:title=詳細はこちらの記事に → Jリーグが進歩するために学ぶべき、
世界最高のコンディショニング理論。
〜【第1回】 バルサも採用するPTP〜]


ここでは詳細を省くが、ポイントはサッカーの動きを徹底分析した上での爆発力と回復力を高めるトレーニングをすることだそうだ。

韓国サッカー界にはこのトレーニング理論はもう残されていないのだろうか?

もし残っていたとしたら、日本人の池田氏にそれを伝えるという選択肢はあったのだろうか?

それを知ることで池田氏がさらにレベルアップすることはあったのだろうか?

それにKリーグに一人もフィジカルトレーナーがいないとすると、Jリーグ勢はACLであっさり負けている場合ではないのではないか?

そう考えていくと、今の日本にとって必要なことは、上述したメンバーをナショナルトレーニングセンターに集めて知見を集約することではないだろうか?

そして体系的に日本の鍼灸などの知見と融合させて世界でも類を見ないサポートをアスリートにできたらいいのに。



今回のオリンピックでの成功要因は、科学的なトレーニング以外にもう一つ鍵となるポイントがあったと感じる。

それは、壁を越えた連携だと思う。

個人商店を張っているだけの競技団体は弱いということ。

柔道が特に懸念される。

ラソン界も危険なニオイがする。

水泳チームはかつてそれぞれの指導者が個人商店のもと構成されていたが、今ではチームジャパンとして知見をシェアしている。

水泳の松田選手はロクテのコーチに拙い英語で頼み込み、3週間フロリダで共に練習を行っている。

ナショナルトレーニングセンターでは、様々な団体が知見をシェアしている。

フェンシング代表はほぼ一年中ここで合宿を張っている。

伝統的な日本の柔道が姿を消し始め、レスリングのようになっていると言われる。

しかし思い出して欲しいのは、柔道界で唯一金メダルを取った松本選手は、小学生までレスリングもやっていた。

しかも全国大会に出場するレベル。

レスリング化してしまっている柔道に対応できていたとして不思議ではないのかもしれない。

これからの日本のスポーツ界は、様々な分野で活躍している知見を交換し、融合し、高め合うことで発展して行くことが求められるだろう。

そのためにはやはり世界で活躍しているトレーナーを一同に会してジャパンの知見を創造して現場に落としていきたい。


参照ブログ:FCKSA55 運動量過多のサッカーは将来への糧になるのだろうか?


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