伝統を大切にしない日本のスポーツとスポーツメディア

クライマックスシリーズの大一番で、記念すべき第1球を投げたのは、俳優の山本裕典だった。
これは試合後に放送されるTBSドラマ「南極物語」の番組宣伝が主目的で、クレーマーが現れた時の言い訳対策として名古屋出身の俳優を最も押したい番組の中から探したというのが本当のところだろう。
中日ファンにとってこれはいいことだったのだろうか?


以前にプロ野球日本シリーズの記念すべき第1戦の第一投を投げたのは、マシュー南ことお笑い芸人の藤井隆だったことがある。
ロッテファンの記憶に残っているだろうか?
往年の名選手をなぜ呼ばなかったのだろう?
球団のプライドや誇りはなかったのだろうか?
ロッテの過去の選手やスタッフはあまり詳しくないが、カネヤン、有藤、落合、荘、高沢、西村その他に31年前の優勝時に活躍した選手やスタッフはいただろうに...
テレビ朝日にプライドを売り渡してどうするんだろう...
単純になぜ村田兆治を選ばなかったのだろう。
ロッテ球団の誇りの一日をマシュー南で飾ったセンスには本当にがっかりだった。
当時の調子でいけば、テレ朝は堂本剛にもやらした可能性は高かった。
やれやれ、正直しんどい....とダジャレを言っている場合でもないのだが、同じ轍を中日も踏んでしまった。


プロ野球の始球式は正直楽しいものであっていいと思う。
これは以前ブログでも紹介した。
「始球式特集」
他のスポーツもあれば、歌手でも芸能人でもいいだろう。
話題性が集客につながるのであれば悪いことはない。
横浜ベイスターズは過去に伝説のほしのあき始球式を行っているが、それで少しでも有利になるのであれば毎試合グラビアアイドルでもいいかもしれない。
しかしそれもレギュラーシーズンまでではないだろうか?
レイオフクライマックスシリーズ日本シリーズの大一番になったらその球団の過去の名選手またはそれを超える大物(首相とか、金メダリストでしかもチームの大ファンとか)を呼ぶのがベストではないだろうか?
シーズンを勝ち抜いた誇りと喜びとこれからの期待が詰まっている時期だからこそ球団のアイデンティティー、もしくはプライドの象徴を呼ぶべきではないだろうか?


断っておくが、私は山本裕典のことが嫌いな訳でもなんでもない。
藤井隆に関してはどちらかと言えば好きなお笑い芸人だ。
彼らは仕事として呼ばれているだけなのだから責めるつもりは毛頭ない。
むしろその方針を打ち出した球団とテレビ局のセンスのなさを責めたい。
ファンの憤りもネット上でよく見る。

ブログ:37年間ドラゴンズ見てきて: ドアラのバク宙より、南極大陸

球場に、もしくはテレビの前で見ている親子やファンの会話を想像できないのだろうか?
子供:「お父さん、あの始球式を投げている人は誰?」
父:「あれは小松って言ってな、お父さんが若い頃に大好きなピッチャーだったんだ。勝負強くてかっこよかったなー。球が早くってさ。お父さんは彼が好きでドラゴンズファンになったんだ」
ファン同士の会話ならより容易に想像できるだろう。
宇野や谷沢、都、郭などが登場したらTwitterなどでのソーシャルメディアも大盛り上がりだろう。
(さすがにこの時期に高木守道次期監督を登場させたら本当にセンスを疑うが。。。)
昔話で花咲かせ、よりチーム愛が深まるはずだ。
なのに記憶に残らない普段と変わらない重みのない始球式を重みのある試合で行い、ファンの愛情を深めるチャンスをジャニーズ事務所のプレッシャーに屈してドラマの番組宣伝に活用してしまっている。
中日ファンにはTBSがジャニーズのプレッシャーを受けていることは何も関係のないことなのだ。
ドラゴンズはそれを理解しているのだろうか?
落合監督はファンサービスしないから次期監督球団OBにした球団が、こんなドラゴンズ愛のない始球式をやっていいのだろうか?
最大のファンサービスのチャンスをむしろ汚していないだろうか?
いや仮にドラゴンズが理解していたとして、放映権の管理をしているだろうNPB(日本プロ野球機構)は理解しているのだろうか?
メジャーリーグがAmerican Past Time、つまり国技となっている背景には、親子3代に渡って語り継がれているからだと指摘する人もいる。
日本の球団とマスコミにはその認識が完全に欠如しているようで、過去の栄光にあぐらをかいた結果が現状につながっているように思えて仕方ない。

たかが始球式、されど始球式、日本シリーズの始球式はそれぞれのチームの歴史と誇りを背負える人物が登場することを切に願う。


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