書評:カミソリシュート V9巨人に立ち向かったホエールズのエース



東京から新幹線で大阪出張に行く時に、軽く何か読みたい時にお勧めの一冊。
内容はとてもライトで、著者が若くして父親を亡くし、苦労して岡山東商業に進学し甲子園優勝。
その後巨人にドラフトを約束されながら、実現せず日石に進み、その後大洋ホエールズのエースとなる。
彼の人生を淡々と振り返る構成となっている。
ONとの対戦の強い想いや、同時代に活躍した江夏や堀内への想いなどが綴られている。
また当時の野球界の様子も垣間見えて(第1回ドラフト世代、契約金のオファーなど)興味深いのだが、あまり深く掘り下げないのが惜しいところ。
しかし人柄の良さと尋常ではない努力の量と類い稀なる野球センス(プロ野球に入る前は、ジャイアンツの川上監督からむしろバッティングの評価が高かったくらい打撃も良かった)の持ち主だったことがよくわかる。
引退後残念ながら大洋ホエールズからも横浜ベイスターズからもコーチや監督として呼ばれることはなく、本人の悔しい気持ちも伺える。
ホエールズベイスターズも何故かOBを指導者にあまり起用していない不思議なチームである。
(OBが指導者になることが必ずしもいいことでもないが...)
現在は解説者の他、NPO法人横浜ベイスターズ・スポーツコミュニティー理事長を務めている。


さて、その肝心のシュートに関してだが、人柄があまりにも良いせいか、どーんとわかりやすく「これが秘密だ!」みたいに書かれていない。
エピソードも申し訳ない程度にしか書かれていない。
彼がカミソリシュートを習うのは、日石時代。
OBの野村利則という人物から習ったそうだ。
ただし実際に使う事はなかった。
初めて使うのはプロ3年目から。
入団して最初の2年は甲子園優勝そして社会人でも実績を残した自慢のストレートとあまり自慢にならないカーブで勝負していたそうだ。
しかしあまり結果が出ない。
そして3年目のキャンプでひょんなことから試したシュートを投げたところからキャリアが加速的に上昇していく。
興味深いのは、この年、1969年に大洋はランニングコーチ(陸上短距離選手の田村武雄氏)を正式に起用しており、彼に下半身を徹底的に鍛えられたことも功を奏したようだ。
あまりエピソードは紹介されていないのだが、どれだけの切れ味かというと、1974年にジャイアンツ戦で内角に投じたシュートが実際は肘に当たったデッドボールだったのに、バットの根っこに当たったとされてファウルと審判にジャッジされた。
当時の川上監督は激昂し、ベンチから飛び出し人生唯一の退場処分をくらったそうだ。
しかも本人曰く、この当時は自分の全盛期ではなかったそうだ。
それでも審判の目を欺くことくらいはできるほどの切れはあったということだ。
全盛期ではないものの、動画で彼の投球をみることができるので是非みてもらいたい。





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