書評: Do You Love Football?

理論派で暗い監督の後に勢いのある監督が来ると、成績が浮上するケースがある。
野村阪神の後の星野阪神だったり、大矢横浜ベイスターズの後の権藤ベイスターズしかり。


NFLの典型例は、ジョン・グルーデンヘッドコーチのもと優勝した2003年(2002年シーズン)のNFLタンパベイ・バッカニアーズかもしれない。
前任者のトニー・ダンジーは弱小バッカニアーズを強豪チームに育てた知性派黒人監督。
騒いだりはしゃいだりするタイプでは決してなかった。
その後任として暴れん坊チームで有名なオークランド・レーダーズからやってきたのが、エネルギーの塊、ジョン・グルーデンである。



Do You Love Football?!: Winning with Heart, Passion, and Not Much Sleep

Do You Love Football?!: Winning with Heart, Passion, and Not Much Sleep


なにせ副題が、「ハートとパッションと睡眠不足で勝利する!」である。。。
この本は、プロスポーツのコーチの人生が、どのようなものかとてもリアルに描かれている興味深い一冊だ。
もちろんグルーデンとバッカニアーズの優勝についても当然書かれているが、興味深いのは彼の生い立ちである。
お父さんはインディアナ大学や名門ノートルダム大学等のフットボールのコーチ。
彼は父がインディアナ大学で働いていたころ、その伝でバスケ部の名コーチ、ボビー・ナイトと接する機会も得ていた。
そして冴えない大学でのQB人生を終えると、コーチの運転手から、チームのPC担当など様々なタスクをこなしながら、多くの名コーチ、名門大学・プロチームから教えを受ける。
それは、全盛期の49ersであり、Packersであり、テネシー大学であり、ピッツバーグ大学であった。
こんなフットボール漬けの人生を歩んだ人はそんなにいないだろう。
(ちなみに弟のジェイ・グルーデンも同じくNFLコーチの道を歩んでおり、現在ベンガルズのディフェンス・コーディネーターを務めている。)
その甲斐あってか31歳でオフェンスコーディネーターになり、34歳でヘッドコーチになり、39歳でチャンピオンになったのである。
こんなにエネルギッシュかつ豊富なコーチ陣の下で修行経験を積んだことある人は稀であろう。



そして選手としてNFLでプレイしたことがない人間が、ヘッドコーチとして頂点を極めたことも、アメリカのスポーツ界の裾野の広さを感じる。
今年惜しくもスーパーボウルで敗れ去った天才ヘッドコーチ、ビル・ベリチェックも一度もNFLでプレイしたことがないものの、スーパーボウルを手にしている。
ベリチェックもグルーデン同様父親がアメフトのコーチであり、下働きから始めてトップに立ったという点では共通項が多い。
日本のプロスポーツ界ではやっとこういったケースも出てきた。
日本ハムの大渕スカウトディレクターや今年からベイスターズのGM補佐に就任した嘉数氏などがそうだ。
プロのキャリアがなくても、優れた人材を引き込むことにスポーツ界は学ぶべきだろう。


さてスーパーボウル優勝後の成績は選手のケガなどにより成績が安定しなかったグルーデンが、2009年からはESPNで名解説者として人気を得ている。
その人気番組の一つが、毎年ドラフトにかかるQBを彼が入社面談のように尋問する「QBキャンプ」。
キャム・ニュートンもティム・ティーボウも通った茨の道である。
NFLのドラフトを盛り上げる最高のコンテンツとしてファンには大人気。



今年は注目のQB、アンドリュー・ラックとロボート・グリフィン3世も徹底的に試されるのだろうか?




NFLのドラフトは現地時間4月26日から始まる。
その前にグルーデンの「QBキャンプ」は必見だ。
ドラフトシーズンが近づいてきたこの時期に、一度はジョン・グルーデンの自伝に目を通すのもおもしろいでしょう。


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