トミー・ジョンと彼を有名にした手術

松坂大輔投手が肘の手術、トミー・ジョン手術を今年受け、来年の復活に向けて現在リハビリに励んでいる。
過去には日本ではロッテの村田兆治投手や桑田真澄投手、荒木大輔投手も同様の手術を受けており、二人ともジョーブ博士による執刀で見事復活を遂げている。


トミー・ジョン手術とは、肘の靭帯断裂を別箇所の正常な腱を移植することで修復を図る手術のことを言う。
始めてプロ野球選手として成功し、復活を遂げた投手がトミー・ジョン。
そしてその時の執刀医が村田投手や桑田投手をも担当したジョーブ博士。
今から37年前、1974年9月25日のことである。


現在は医学の進歩もあり、トミー・ジョン手術の成功の確率は約9割とされ、以前より球速が早くなるケースも70%ほどあるとのリサーチも出ているようだ。
その安全性のせいか、最近のアメリカでは誰でも比較的早めに手術を受ける傾向にあり、高校生や中学生でも受けるケースが増えているようだ。
もちろんオールスター級の投手が何人も受けて、無事復活を遂げている。
(前述のように、中にはパワーアップして復活した投手も)
今から37年前、トミー・ジョンが手術を受けた際に、ジョーブ博士が彼に伝えた成功の確率は1〜2%だったそうだ。
それから考えると医学の進歩はものすごいスピードで進んでいると言えよう。

トミー・ジョン曰く、
「ピッチングのモーションを全員が安全に極めることは不可能で、この手術は残念ながらずっと残ってしまうだろう」と、
そのため自分の名前が未来永劫にこの手術と共に語り継がれることも理解している。
しかし37年前、彼が勇気のある選択を行わなければ、松坂投手も村田投手も桑田投手もキャリアがケガの時点で終了していた。
ジョーブ博士に会っていなければ、ジョンもまた復活は無理だったかもしれない。
さらに手術の翌年の1975年、ドジャーズのオーナー、オマリー家がトミー・ジョンをクビにしていたら、ひょっとするとこの手術はここまで進んでいなかったかもしれない。
当時は引退宣告が常識のこのケガに対し、ドジャーズはジョンをクビにせず、気の遠くなるリハビリをすることを許し、スコアラーなどをさせつつ彼を雇用し続けたのだ。
そうして1976年にトミー・ジョンは見事復活を遂げ、1976年に10勝10敗で奇跡を復活を果たし、カムバック賞を見事受賞する。


残念ながら、そんな偉業を残した彼を日本で紹介することはほとんどない。
なので、もう少し彼について書いてみたい。
左利きの変化球ピッチャーというのがトミー・ジョンの定説だが、実は手術前までの球速は早い方ではあったようだ。
つまり完全な技巧派でもなかったようだ。
バスケットボールの腕前も相当なものだったようだが、1961年にインディアンズにドラフトされると、野球一本に絞るようにした。
1963年にプロデビューし、手術前までに124勝を挙げている。
手術後は肘等に負担のかからないフォームに修正し、1989年の引退までにさらに164勝も挙げている。
ここからは完全な技巧派への変身を果たしていると言えるだろう。
本人はメジャーリーグで最も誇りに思うことは、手術から復活したことではなく、「復活後一度も肘の影響で休んだことがないことだ」とも語っている。
通算288勝231敗、
オールスター4回出場、
46歳で引退をしている。
ちなみに引退を決意したのは、マーク・マグウァイヤーにヒットを2本打たれたこととも言われている。
マグウァイヤーの父は、トミー・ジョンの歯科医だったそうだ。
歯科医の息子にヒットを打たれているようでは、潮時だと思ったとのこと。
しかし、これだけの功績を残しながら、残念ながら殿堂入りを果たしていない。
本人は自分よりもジョーブ博士を殿堂入りさせて欲しいと語っている。




これだけの人物にもう少し敬意を払ってもいいのではないだろうか?
本当なら松坂大輔にも時間があるならトミー・ジョンに会いにいってもらいたい。
彼はトミー・ジョンのことを少しでも知っているのだろうか?
それとも日本のマスコミと同じ認識なのだろうか?
きっと会えば何か得るものもあるだろう。
ひょっとすると調整法も変わるかもしれない。
ドジャーズの黒田が調整法について指摘している。
もしかしてフォームが変わるかもしれない。
佐藤義則は、松坂投手のフォームがよくないことを指摘している
今でこそアメリカでは復活がほぼ保証されている手術の一つである。
37年前のような大事ではないかもしれない。
しかし野球の歴史と伝統を重んじて今後の人生を歩むのとそうでないのでは、松坂自身の野球人生も変わってくるような気がしてならない。


さて、日本では松坂投手で話題が独占されているトミー・ジョン手術だが、他にも同じレッドソックスの田沢投手も手術を受けている。
またメジャーで最も注目を浴びているのは、ワシントンのストラスバーグ投手。
彼がどのような復活を果たすのかは、チームのみならずアメリカ全体が注目している。



ヤンキースのジョバ・チェンバリンもビッグマーケットの球団のキーマンとして復活が注目されるだろう。


さてそのトミー・ジョンの現役時代の動画を必死にyoutubeにて探したものの、いい動画はほとんど見つからなかった。
手術後のこちらの短い動画で確認してもらいたい。
得意のシンカーを駆使している貴重な映像である。




最後に松坂投手に関しては、熱血ボストンファンには受けがあまり良くない。
大金を叩いて獲得したのにも関わらずそれに見合う活躍をしていないということだ。
彼自身も納得はしていないだろうし、日本のファンももどかしい。
出演すると呪われる年始のとんねるずのスポーツ王とかに出るのは辞めて、来年こそは大活躍して欲しい。
(昨年はロッテの選手複数名とベイスターズの森本と松坂が出演していたジンクス番組)
ダルビッシュの渡米や同年代の和田や岩隈の参戦もあって焦りも出るだろう。
この手術の原点を見つめ直す意味でも是非トミー・ジョン本人に会ってもらいたい。
聞くところによるとテキサス州のアーリントン在住だそうだ。
本人だけでなく、日本の野球界にとって意義のある出会いになるのではないだろうか?
そして日本のマスコミにも是非彼に取材してもらいたい。


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