地域密着型スポーツクラブと部活の未来6(部員編)

部活が存続していくためには、部員が必要である。
当たり前のことだが、現在それが必ずしも簡単な状況ではなくなっている。
世間では少子化が進んでおり、子供よりおじいちゃん・おばあちゃんの数が段々と増えてくる。
そんな中、当然部活に参加できる人数の絶対数が減ってくる。
つまり競技人口が減るということである。
年金問題は多く取り上げられているものの、マスコミや専門誌でこの問題を取り上げているのはあまりみない。


単純に考えてみよう。
昔の都心周辺の小中学校には、一学年10クラスなどざらであった。
現在はそれが普通の状況とはいえない。
人口が減っているのに対して、PC、ゲーム、塾、習い事など様々な競合要素が増えている。
大学では体育会入部希望者が年々減っていると聞く。バイト族、資格族、そして起業家を目指す人などが増えているからだそうだ。


基本的に、人気→普及→人口増加→魅力増加→資金→強化→人気→普及→人口増加→魅力増加→資金→強化....とこんな感じでいいサイクルができたスポーツが人気競技に発展してきた。
野球やサッカーなどはわかりやすい例だろう。
もちろん順番も多少変わることもあるだろうし、スタートの要因が違うかもしれない。
逆に、このサイクルがいびつだったり、途中のリンクが崩れたりすると発展が継続しないことも多々ある。


しかし、強化という面で見ると、必ずしもこのサイクルが今現在あてはまらない場合が出てきた。
少子化の現在、スポーツの世界での親の子供への期待度(何がなんでも成功させてあげたい度)は、昔の教育ママ並みに強くなっている。
情報化社会でもある最近は、エリート教育性が強まっているという一面もあるかもしれない。
子供をより良い指導者の下でやらせなければと考えたり、プロ選手を多く輩出している学校はどこか?と調べたり。
この傾向が強くなるといい塾はどこか?や一流大学への合格率が高い学校はどこか?ということと何か似てくる。


その結果、努力した子供が世界にも羽ばたく程の実力を兼ね備えるケースも出てくるし、情報が溢れる時代だからこそ、認知されるスピードも早い。
が、これは上記のサイクルにも当てはまらない。
なぜなら普及や底辺拡大といったベースを元にしていないからだ。
これはその子供と親と関係者が偉いのであって、そのスポーツを育てたり普及したり環境を整えたりすべき人たちは別に特別偉くもなんともない。(もちろん地道に現場でたくさん頑張っている人も間違いなくたくさんいるが)。
宮里藍浅田真央は色々な面でマスコミに取り上げられたりしているが、女子ゴルフとスケートの競技人口が急激に増えたわけではないだろうし、その結果スターになったわけでもないだろう。


つまり人気選手が出てきた後が、本当に大事なステージである。
マスコミはなでしこジャパンに彼氏がいるかどうかなんて一生懸命に調べていないで、彼女たちの魅力やサッカーのおもしろさやライバルを取材して競技の素晴らしさを伝えるべきだし、スターを得た協会はここぞとばかりに普及のプランを練り、多くのスポンサーの協力を上手に借りるなどして認知を広めるなどの努力をするべきだろう。
日本人は成功後がとても脆い傾向がある。
祭りの後こそが最も大事だ。
各関係者はスターが出たことにあぐらをかいていないで、今こそ必死に次の手を考えるべきではないだろうか?
そうでないと、その競技は多くの競技者とファンによって支えられていない場合は、また冬に時代に戻る可能性が強い。

 
それは、部活にもいえることである。
各学校は、どの部活に対していいサービスを提供できるのか?
どのようにすれば少ない学生でいい部活動を行っていけるか?
魅力的な指導者は育っているか?などその辺りを整理しないと、部員はなかなか集まらない時代に突入していく。
いや、もう突入しているのかもしれない。


「持続性」という観点でみていかない限りは、どこかの部活がなくなったり、どこかの部活にキャパを超える生徒が所属しているなどとおかしな問題もでてくる。(あなたの所属していた部活が母校から消えたらさびしくありませんか?)
そしてその結果、スポーツがますます文化としての位置づけを得られなくなってくる。
一部の人気競技だけしか栄えなくなる可能性もある。


少子化社会でもある現在だが、情報化社会でもある。
学生もばかではない。
部活が魅力的かどうかは昔より容易に見抜いてしまう。
現場で多くの方々が頑張っているが、お上(特に協会関係者、もしくは学校のお偉い方)に今こそ頑張ってもらわないと、日本から幾つかの部活、はたまたスポーツが消えてしまうかもしれない。


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