牙―江夏豊とその時代

牙―江夏豊とその時代

牙―江夏豊とその時代

先日プロ野球オールスターのメンバーが発表されました。
毎年この季節になると、江夏豊の9者連続三振が話題になる。

私は毎年ナンバーの日本シリーズ特集の江夏豊の解説が楽しみだ。
理屈がありながらどこか一本木で男臭く、それでいて選手想いな深みのある解説だといつも感じた。
時は昭和40年代。
ONがいて、村山がいて、堀内がいて、田淵が登場し、そしてそのほかに今では語られることが少ないものの、味のある、個性豊かな芯の通った「男」たちが、プロ野球にいた。
マスコミと選手がまだ信頼関係があり近かった時代。
豪快な男たちの中で、江夏も勝負していた。
この本は、豪快でありながら情に深く、でも世渡り下手でナイーブな江夏を数多くの熱い男たちの証言をもとに追っていくと同時に、江夏とかかわりのあった人間と時代背景に迫る本である。
きっとラグビーの本を読むことが好きな読者には、納得の一冊だろう。
せこさがなく、プロとしての男気、覚悟、そして堂々と胸を張って勝負したサムライのような男たちの本である。
今彼らの熱い魂をフィールドで表現している人はいるだろうか?

この時代に勝負をした人たちが、指導者として苦労する理由がよく見えてくる。
プライドと誇りの塊のような人たちにとって、自分の経験を押し付けてしまいたくなることが理解できてくる。
と同時に、江夏はいい指導者になるのではないかとも思う。
情に深く、確立した理論があり、何よりどんなレベルでもかまわないくらい野球が好きだ。
ただ、その責任とプレッシャーに押しつぶされないか心配である。
この本の特徴は、江夏だけではなく、彼と接した周りの人物の取材がしっかり構成されていることだろう。
彼らの人物像からプロとはなんであるか?そしてその時代背景及び当時のプロ野球が丁寧に説明されている。
魅力的で個性豊かな熱い人たちばかりだ。

最近の野球の本は、スポーツビジネスやら軽いプラス思考の本が多かったこともあり、久しぶりに野球で熱い本を読んだ。
まだまだ江夏豊について知りたいと思う1冊である。

でもやはりクラシックはこれなのだろう。



ちなみに動画に登場する近鉄の吹石選手は、タレント吹石一恵のお父さんです。