ウェブ×ソーシャル×アメリカ <全球時代>の構想力
ウェブ×ソーシャル×アメリカ <全球時代>の構想力 (講談社現代新書)
- 作者: 池田純一
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2011/03/18
- メディア: 新書
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思想・哲学 学術的な一冊
まずタイトルがいけない。
「ウェブxソーシャルxアメリカ」
これは誤解を生む。売れるタイトルをつけたのだろう。
帯に記されている文章こそがタイトルにふさわしい。
「Google, Apple, Facebook,Twitterはなぜアメリカで生まれたのか?」
アメリカという国の歴史と特性を紐解きながら、それをウェブの歴史と折り合わせ、どうやって現時点までアメリカにおけるウェブがたどり着いたかを説明した学術的な一冊。
ビジネス書ではない。
タイトルから想像しがちな、ここ最近のアメリカのソーシャルメディアのトレンドや事例紹介などの実用的な本では全くもってない。
そして何より難しい文章が続く。
例えば(以下抜粋)
「経緯はどうあれウェブが遍在化してしまう社会の中にある当のウェブ自体は、今後、それ自身の持つ可塑性の下で漸次実現される可塑的な自由を、それこそ一歩ずつ拡張させるところでこそ、意義を持つのだろう。」
前後の文脈はもちろんあるが、こういった文面が続くことを覚悟で読まないと、途中で本を置くことになるであろう。
出てくる単語や名前の例として
カウンターカルチャー、トランセンデンタリズム、プラグマティズム、トグヴィル、ヴィーゴ、
著者自ら「今後のウェブの構想力を捉えるために、実は、社会に関わる思想や哲学に関心を寄せる必要が、これからのビジネスマンやエンジニアには出てくる。経営学を学ぶだけでは全く足りない」と述べているように、科学、哲学、社会学、経済学、歴史など様々な観点からアメリカのウェブの発展をそれこそ建国の1776年から遡って説明していく。
テーマが壮大すぎるために、途中脱線も多く何を語ろうとしているのかわからなくなることもあるが、逆に遡って説明するが上に、面白い視座もある。
例えば、
Google, Facebook, Apple を真善美というメタファーに置き換えた点。
Googleは真、Facebookは善、Appleは美というように。
これらの企業の思想的背景はこの本を読めばよくわかる。特にFacebookのザッカーバーグとローマ帝国の結びつきは興味深かった。
その他ウェブの近未来のキーワードは、「遊戯性」と示唆した点。人間と機械の協同で、従来のルールや制約からはなれ、世の中をよくすることができる。
アメリカには「世の中をよくする」make better する魂が存在しているが、その背景がよく説明されている。
著者はユリイカなどに寄稿しているだけあって、実用性というよりかは思想的な学術書であった。
しかしウェブの本質や多くのトレンドを生み出しているアメリカの思想を知る事は、ビジネスマンにとってもきっと役に立つであろう。
ウェブビジネスに関して興味が高い人、もしくは志が高い人には薦められるものの、裏切られる人も多い一冊であると思う。