IMG アカデミー 世界のトップを生み出す施設

残念ながら今日世界第5位のフェレールに敗れてしまったものの、
錦織圭の躍進は日本のスポーツ界にとって明るい話題だけでなく、
多くのアスリートを勇気づけていることだろう。


錦織の13歳から本拠地としているのが、アメリフロリダ州にあるIMGアカデミー。
IMGは世界のトップ選手を抱えるアスリートのエージェント企業。
育成、トレーニング、契約、スポンサー様々な面でトータルにアスリートを支援する。
日本の選手でも錦織の他に、宮里美香浅田真央石川佳純石川遼室伏広治など多くのアスリートが所属している。


ここのアカデミーが驚くべきことは、その広大なキャンパスのみならず施設の充実ぶりだろう。
テニスコートだけでも50面以上。
ジョコビッチシャラポワなどの面々も登場する。



その他に、ゴルフ、野球、バスケットボール、アメフト、サッカーの施設があり、
トータルのトレーニングとサポートを行っている。
敷地内には寮はもちろん、美容院やその他の生活面の施設も完備。
アカデミーに所属できるのは18歳までだが、もちろんプロに進んだ選手は錦織のようにここを拠点とする事もできる。




アカデミーの年間の授業料は約600万ほど。
全額親が負担するケースもあれば、スカウトしたり各協会や所属からの負担もある場合もある。
いずれにせよ全員が全員プロになれるわけでもないが、
アメリカの場合その後有名大学へ進学、そこで活躍しいずれまたIMGにお世話になるケースもあるという。
ビジネスでいうならば先行投資とリターンってところだろうか。
しかし見込んだ選手が必ずしも大成しないのがスポーツの難しいところ。
アカデミーはそこのリスクを埋めるためかどうかはわからないが、
一般向けのキャンペや教室も開いている。


一つ日本ではあまり馴染みのないアカデミーの使用例を紹介したい。
NFL 2011-2012シーズンの新人王、キャム・ニュートン


このシーズンはロックアウト(スト)のため、キャンプのない異例のシーズンだった。
QB(クォーターバック)という司令塔のポジションの性質上、キャンプがないままシーズンを迎える事は相当不利な条件であった。
そのため、ニュートンがIMGでどのような準備を行ったかというと、

ドラフト直後にIMGアカデミーの約185㎡の4ベッドルームの宿泊施設に入る。
そこで、IMGが契約しているコーチ、2000年のハイズマン賞受賞者、クリス・ウェンキ氏の指導を受ける。


疑似NFLキャンプを再現したトレーニングに加え、
フィジカルトレーニング、そしてQBに最も大切なフォーメーションやディフェンスの陣形を読む教室での指導も加わる。


途中元NFLのQB、ケン・ドーシィー氏も加わる。



そして準備万端、ロックアウト終了後のニュートンの活躍ぶりは、もはや語る必要もないだろう。
ちなみに、当時のアカデミーでのトレーニングについてニュートンは、こう語る。



ちなみに費用は全額スポンサーのアンダーアーマーの負担だそうだ。




IMGアカデミーでは、他競技でもこのような疑似体験を通してプロの世界への移行、またはシーズンへの移行をスムーズにする手伝いを行っている。



さて、では日本ではこういったサポートを得られるところはあるのだろうか?
トップアスリートならナショナル・トレーニングセンターになるのだろう。
民間では私の知る限り存在していないというのが日本の現状だろうか?
規模はともかく、そしてサービスに限りがあるものの、先日のNHK特番「プロフェッショナル仕事の流儀」で紹介されたイチロー選手のトレーニング機器を開発したワールドウィングが近いかもしれない。


(動画は2008年時のもの)


ここは小山氏が提唱する初動負荷理論をもとに、独自のトレーニングをアスリートに提供する。
その理論に基づいて開発されたマシーンをイチローは自宅に導入している。
中日の山本投手、ブルワーズの青木選手、その他ゴルフの青木功選手、陸上の100m日本記録保持者の伊藤浩二氏なども通っていた。


新トレーニング革命―初動負荷理論に基づくトレーニング体系の確立と展開

新トレーニング革命―初動負荷理論に基づくトレーニング体系の確立と展開

「奇跡」のトレーニング

「奇跡」のトレーニング



ちなみに番組で彼が語った言葉、

「大人になって体が成長していくとセンサーをみんな失っていく」
「特に無理やりバランスを崩して大きくしていく人たちはどんどんセンサーが崩れていってわからなくなるんですよね、みんな」


という言葉は清原へのアンチテーゼだろうか?
ワールドウィングのトレーニング機器がイチローのセンサーを保ってくれるという。
同じく年末の特番を見ていたら、清原と桑田のトレーニングの質の違いは明らかだっただろう。



さて話を戻して、ワールドウィングのオフィシャルサイトを見る限り、
周囲の施設と提携しており、合宿的なキャンプを張れるものの、
IMGアカデミーとは様々な意味でまだ道のりは遠い。
これはまだまだ日本におけるトレーニングの位置づけの低さ、そして市場としてまだ未成熟な部分だろう。
しかし、今後日本がスポーツ大国になっていくためには、すぐには無理でも、
少なからずこんな施設が存在していることだけでも大きな意義があるのだろう。
いずれ日本にもこういった拠点ができることを夢見つつ、イチローのセカンドキャリアはこういった事業であることを期待してみたい。







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