「ヘッドレスチキン」と「桜木JR」という最強の戦術


アメリカのバスケ用語、
「ヘッドレスチキン」
をご存知でしょうか?
90年代NY Knicks ファンならジェラルド・ウィルキンス(ドミニクの弟)を思い出してみるといいかもしれない。




バスケにおけるヘッドレスチキンの定義は、
ゲーム・インテリジェンスのなさ、
次にカットインした時に、見てる側に悪寒が走る選手、
苦し紛れの片足ジャンプが多い選手、
TO(ターンオーバー)が多い選手、
ショットセレクションが悪い、
キープ力がない、
外角シュートが弱い 
このヘンとする。


つまり余計な時にカットインしたり、シュートしたり、TOしたりする選手。
アメリカはそこは観客も目が肥えているし、指導者も相当うるさい。
そのため外人やアメリカの大学帰りの選手は己の出来ること出来ないことが比較的整理されている場合が多い。
例:トヨタの松井、伊藤選手



日本のヘッドレスチキン代表は意外と思う人も多いかもしれないが、ある意味バスケ界の顔、五十嵐選手だと思う。
アイシンの柏木選手と比べて、ゲームメイク力と外角シュート力とゲーム・インテリジェンスのレベルはかなり低い。一言でいえば「判断力」につながる。




まだ本調子じゃないものの、無駄な片足ジャンプがないことや、TOしないことや、ゲームインテリジェンスという意味では田臥選手の方が見ていてはるかに安心する。
彼の問題は外角シュートだが、それはとりあえず置いておいたとして。



では、ヘッドレスチキンにならないためには?
単純に1対1のスキルの高さだろう。ボールを奪われないという大前提で、横、縦、高さ、前後、もしくはタイミングでずれを作れるかどうか?
その上で狭いハーフコートの中でスピードを上げた際に、止まってジャンプシュートできるか?
周りが見えているか?
決定力があるか?


この辺が鍵となる。
毎回五十嵐選手のようにカットイン時に床にドカーンとダイブせざるを得ないシュート状況は、見栄えのインパクトはあるものの、判断として往々にして苦し紛れの結果である。
それにファウルもらえないことが多く、逆速攻の対象にもなる。
つまりカットインがヘッドレスチキンかどうかのリトマス試験紙


カットイン時に綺麗に終われる選手は大抵レベルが高い。
床に転がったり、ボールをはたかれたり、簡単にシュートブロックされたり、TOしたり、当てもなく空中に飛んだり、派手にチャージしている選手は、まず頂けない。
こういう人を見かけたらヘッドレスチキンと呼んであげましょう。


違う意味でのヘッドレスチキンは、求められてもいないのにポンポンシュートを放ってしまう人にも当てはまります。
ブレックスの山田、三菱の鵜澤あたりがそうかもしれません。
彼らがアイシンでプレーできない理由はその辺りでしょう。
逆にアイシンの鈴木監督はそこの見る目があると思う。


アイシンの戦術はこの約10年一環として「桜木JR」。
これが戦術なのです。



離されれば打つ、
近寄れば抜く、
状況が悪ければ背中を向けて押し込んでポストプレイに持ち込む、
ダブルチームが来たらパスを出して3ptを呼び込む。
彼のJBLで卓越した技術と、ゲームインテリジェンスのあるPGと外角シュートを打てて余計なことをしない選手とディフェンスの頑張りで成立しているチームです。
わかりやすく言えば、連覇した時のロケッツ。



当時のロケッツは、オラジュワンが戦術でした。
彼のまわりに、スミス、オーリー、エリー、カセルというシューターを並べ立てる戦術。
後はリバウンドとディフェンスを頑張る選手一人。
まぁー途中ドレクスラーというずるい選手も加入しましたが、NBAのGやFでボールキープできない人なんていないので、余計なことをせずに3ptラインで待つ。
ずれはオラジュワンが作ってくれる。
後はゴールにカットするか、パスをもらって3ptを打つか。
単純なものだ。
当時のヘッドコーチに戦術家としての名声はアメリカではありません。
(ちなみにロケッツの戦術を発展させたのが、スパーズのグレッグ・ポポビッチでしょう)
アイシンがここ何年も行ってきたのはそれ。
佐古から柏木、小宮から朝山、外国人と多少の入れ替わりはあれど、気付きませんか?
役割は一緒です。
(ちなみに佐古選手の力は突出していました。
3pt良し、カットイン良し、カットインから止まる事も出来たし、ゲームメイクの意識も高かったです。)





つまりこれが何を意味するかというと、判断を簡略化することで、ヘッドレスチキンタイムの出現率を減らしているとも言えます。
ヘッドレスチキン現象が出るとすれば、ショットクロックがゼロに近い時です。
一度JBL日本人選手のショットクロック10秒切った時にシュート確率を出すと面白いかもしれません。
おそらくヘッドレスチキンが浮かび上がることでしょう。


一方でチキンなだけに鶏と卵で、アイシンの鈴木監督はこういった選手の存在を理解していて、あえてチーム編成に加えていないのかもしれません。
アイシンはゲーム・インテリジェンスが高い選手が多いのが特徴です。
役割付けをはっきりした指導を行っている裏返しかも知れませんが。。。
いずれにせよ、彼はそこにたいして敏感、むしろアメリカのスタンダードで考えているといえるでしょう。


日本ではパッシングゲームが主流です。
これがヘッドレスチキンを生んでいる元凶かもしれません。
パス・ラン主体のパッシングゲームではどうしてもボールが散らばる。
そして動きの中で目の前にスペースが生まれると、人間どうしても本能的にそこに向かいます。
その時にヘッドレスチキンかどうかで結果に大きく差が生まれます。
パッシングゲームのもう一つの弱点は、責任の所在がわかりにくい、つまり明確な役割がオフェンスで付けにくい。


日本の傾向として、190センチ台のFの選手が特に苦労する傾向があります。
その理由は、大学バスケとJBLのレベルの差でしょう。
では何が違うかというと、3つ挙げられます。

  • 外国人選手の存在
  • フィジカル
  • ディフェンス

JBLではここのレベルが急激にアップします。
結果、コートが狭く感じます。
フリーの時間が減ります。
ずれを作るのが容易ではない。
ゴール下近辺の高さが全く違う。
大学バスケの現状では、190センチ以上あって動ければ、かなり活躍できてしまうのが現状です。
しかし一つ上に上がると、ワンドリブルでレイアップに行けていた世界が大きく変わります。
相当なドリブル力含む前述の1対1能力

ボールを奪われないという大前提で、横、縦、高さ、前後、もしくはタイミングでずれを作れるかどうか?
その上で狭いハーフコートの中でスピードを上げた際に、止まってジャンプシュートできるか?
周りが見えているか?
決定力があるか?


がないと綺麗にシュートまで行けません。
そのため、朝山、広瀬、大西などが大学ほど華々しく活躍できずに苦戦してしまうのです。
この手の選手は幾多あまたと輩出され続けられるのが今の日本の現状です。
一方川村選手レベルまで行くと、見苦しいTOの数がだいぶ減り、アシストも残すという結果につながってきます。



このレベルの選手が増えないと、日本は世界では勝てないでしょう。
そしてこのレベルの選手が増えないからこそ、日本のバスケ界はアイシンと桜木JRという戦術をもう10年近くも超えられないのです。
これが日本の実情です。
竹内兄弟が桜木JRを超えられなかった時点で日本と世界の距離はまだまだ遠い。
では超えるためにはどうするのがいいでしょう?
現状二つの選択肢があると思います。
パッシングゲームの幻想を捨て、育成現場から1対1強化の指導指針を協会が率先して出す。
②役割分担を徹底した戦略で、育成現場からスペシャリスト養成の方針を協会が出す。


②のわかりやすい例として、日本にもヘッドレスチキンにあまりならない選手はいるが、ほとんどがシューターという傾向が強い。





やはりバスケットは突き詰めればシュートを入れる競技。
1対1に強くなる、有利になるための最大の武器、そしてヘッドレスチキンを避けるためには、シュートが上手ということは必須条件ということだろう。
シュートの指導が実は一番の近道かもしれない。
そしてその先に始めて日本バスケ界のイノベーションが待っているのだろう。


いかがでしょう。
日本のレベルアップのために「ヘッドレスチキン」。
この言葉を流行らせませんか?
まだイメージが湧かない人はこの少しえぐい動画をご覧下さい。



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