日本の監督の海外進出

サッカー日本代表前監督の岡田武史監督が中国スーパーリーグ杭州緑城の監督としてシーズンを迎える。
日本合宿も行われ、Jリーグのチームとも練習試合を行う予定でいる。



日本の選手が海外進出することは昨今どのスポーツも珍しくなくなっている。
サッカー、野球を筆頭に様々な競技で海外進出が行われているものの、指導者となるとその数は一気に減る。
近年最も有名な例は水泳のシンクロで中国代表を率いた井村コーチだろう。


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他には全米女子バレーボール代表を率いた吉田監督などの例もある。
指導者ではないが、トレーナーではACミランで長年務める遠藤氏のようなケースもある。
でもやはり今回の岡田監督のようなケースは残念ながらかなりレアケースとなってしまう。
翻って国内の現状を見てみたい。


現在ホッケー男子、ハンドボール女子、バトミントン男女の代表監督が韓国人指導者である。
J1昇格を決めたサガン鳥栖の監督、ユン・ジョンファン氏も韓国人指導者である。
逆に日本人指導者が韓国で指導をしている話は聞かない。
海外の舞台での指導者の戦いでは、完全に遅れを取っているとしか言えない。
言語のハンデは共に同じなのに。
たまたま最初に韓国の指導者を例に出したが、ブラジル人指導者はサッカーで選手同じくらい進出しているといえるだろうし、オランダ人指導者もサッカーに限らずホッケーやスピードスケートで指導していると聞く。
体操の女子代表もウクライナからコーチを招聘している。
ラグビーでは、なんといってもNZ人コーチの海外での活躍は目覚ましい。
昨年のワールドカップのベスト4のうち、NZ人監督は3人。
鶏か卵かの話かもしれないが、競技のレベルが高いから監督も海外進出できるのか?監督のレベルが高いから競技が高いのか?
どちらか考えてみたいが、一つ日本に言えることは、競技レベルが高いのに、アメリカには野球の日本人指導者の話は聞こえてこない。


では何ができるだろうか?
ヒントはいくつかある。
大リーグのスター、アルファンソ・ソリアーノはキャリアを広島のファームでスタートしている。
彼にとってはいい思い出はあまりない噂も聞くが、その後の彼の活躍に少しでも貢献したとは言えるのではないだろうか?



残念ながら若くして亡くなってしまったが、北京五輪のマラソン金メダリストのワンジル選手は、高校時代に仙台育英高校に留学し、その後日本の実業団に所属している。
ここでも少しは日本での練習が役に立ったと言えないだろうか?



少ない例ではあるが、日本人指導者の質が低いということではないこともわかる。
ご存知のように日本には世界に誇れる沢山の名指導者がいる。
問題はその後だろうか。
日本では常に監督は企業もしくは学校、はたまたチームに所属している意識が強く、欧州のように個人商店のプロという認識は当人も周りも低いだろう。
これはプロの競技が少ないせいもあるから仕方ないかもしれない。
しかしだからといって遠慮しないでもらいたい。
むしろ日本の指導者はより良い素材を求めてどん欲に海外に目を向けて欲しい。
例えばボヤキのノムさんが大リーグの選手を指導したらどうなるか?想像してみて欲しい。
最近あまり聞かないが、小出監督がアフリカ選手を指導したらどんなマラソン選手が誕生するのだろうか?
ただ単純に助っ人留学生として呼んで国内の大会で勝つことを目標とするよりかは夢のある話だし、次につながる話でもある。


そのためには、まずはプロとしての意識(個人商店という意味で)を持ち、次に人脈が必要だろう。
代理人の存在が欠かせないのかもしれない。
海外でくすぶっているタレントがいれば、逆によい日本人指導者を紹介するような流れが必要だろう。
岡田監督にどのようなルートで話があったかは知らないが、実はそこが今後の日本人指導者の海外進出の最大の鍵かもしれない。
その流れを作り出す意味でも岡田監督の今後の活躍はかなり重要となってくる。
異国の地で日本人が指導できるという前例を作ること。
そして一度実績を残したら次の人物が続かない限り、1回限りで流れが途絶えてしまう可能性も高い。
サッカーで言えば西野監督になるのだろうか?
それとも引退した宮本恒靖選手だろうか?
水泳で言えば平井コーチだろうか?


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いずれにせよ、世界的に有名指導者が多い国の競技レベルは高いと言えるだろう。
日本のスポーツ界が次のステップに進むために、岡田監督には是非成功してもらいたいし、指導者もどんどん挑戦してもらいたい。
その流れこそが、日本のスポーツ界を成熟させて行く。


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