書評：勝利にひそむ運と必然
- 作者: 井上真一
- 出版社/メーカー: 六法出版社
- 発売日: 2001/08/01
- メディア: 単行本
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桜花学園（旧名短）がなぜ全国優勝を繰り返せるか？名将井上眞一のコーチ哲学・理論
全国大会をこれだけ優勝した指導者は多くない。
何せ優勝回数が多すぎてわからないくらいだが、今年50冠達成を目指しているそうだ。
奇策を用いるでもなく、特殊なトレーニングをするでもなく、王道を常に一歩一歩着実にまい進するためか、勝ち続ける事が当たり前のようになっているからか、この人物に焦点が当たることは少ない。
ひょっとすると本人がわざとそうしているのかもしれない。
本を読んでみても、奇をてらったものは何も見当たらない。
むしろまともすぎることが、当たり前のことが当たり前に書かれている。
逆を言えば、「完璧」という言葉が思い浮かぶほど、用意周到な準備と隙のない人間教育と教科指導が合致している。
中学教師からスタートさせた指導者生活。
意外にも大学では体育会に所属していない、日本では異例の経歴の持ち主である。
そんな彼の言葉をいくつか紹介しよう。
学校スポーツは大人社会へのトレーニング
コーチングというのは、人間が人間を教えるわけで、基本的に三つの条件を満たしていないとうまくいかないと思う。
教えるものそのモノが好き、教える事が好き、教える相手が好き、の三つである。
今の私の立場でいうと、子供が好き、バスケットが好き、バスケットを教える事が好き、となる。コーチングの基本は理論と実践
ディフェンスはシステムである
これからは栄養・食事も日々のトレーニングと同じように重要なルーティンワークと考えるべきだ。
チームドクターは、日本一を目指すには必要欠くべからざる存在である。
スポーツ選手として上を目指すのならば、故障は必ず、専門のスポーツドクターに治療してもらった方が、私は良いと思う。
進路については、その選手がすぐに試合に出られるところへ行って活躍して欲しいと思っている。
夏のインターハイで試合に出られずに応援団に回って一所懸命やった、そういう選手の進路決定を私は優先する
日本スポーツ界はプロの人格的な部分にあまり重きを置かない。日本バスケット界をメジャーに導くスタープレイヤーを育ててみたい
このほか紹介したい言葉はいくつもあり、様々なエピソードもたくさん詰まっているので、読んでいておもしろいと同時にたいへん参考になるはずだ。
しかし繰り返し書くが、秘策や奇策がある訳ではない。隠された魔法があるわけでもない。
あくまで当たり前のことを当たり前に徹底して行っているという印象だ。
しばらく日本バスケットボール協会の迷走は続いている。
男子はbjリーグが設立されても未だに２リーグ存在し、世界選手権は2006年に開催されるも、赤字だけを残した印象が強い。
女子は満を持して日本代表監督に往年の名選手、田臥よりも先にNBA選手になった萩原美樹子（昔WNBAに所属）を指名するも、強化体制やバックアップ体制に疑問符を付けられ、辞退されてしまう。
そして北京の出場は叶わず現在はロンドンに向けて戦っている。
しかし、この大会は日本のバスケの未来がかかっているにも関わらずちぐはぐ感は否めない。
この大会の重要性を綴ったブログはこちらへ→ 日本バスケの未来がかかっている大会が始まります！
ここで切符を逃したら、井上コーチの登場かもしれない。
バスケ界への最後のご奉公に代表監督とかはいかがでしょうか？
大神や渡嘉敷などのように日本を代表する選手を数多く育てた井上コーチ。
現在の日本代表にも４人桜花学園出身者がいる。
彼が高校生ではなく、自立した女性を教えたらどうなるのであろうか？
以前能代工で何度も優勝しながら、JBLの監督としては全くダメだった加藤監督のような例もある。
彼が代表を強化したら、どのように戦うのであろうか？
一度みてみたいものだ。
あまり知られていないかもしれないが、日本の女子バスケのレベルは世界的にみてもそれなりに高いレベルにある。
しかし残念ながら、萩原以降に大神が１年活躍したものの、それ以外に世界のリーグに参戦する選手が続いていない。
その点、渡嘉敷には様々な期待がかかるものの、強い個がまだまだ足りない状況といえるだろう。
日本リーグも2強時代が終わり、新たな戦国時代に突入し、力が均衡したことによってレベルが上がるかもしれないが、次のレベルへ突き抜けていく存在がないと、世界に置いていかれるかも知れない。
選手が常に高いレベルの環境で切磋琢磨できるようになるためには、海外で活躍すること求められる。
井上コーチには、まだまだ頑張ってもわらなければならない。
