地域密着型スポーツクラブと部活の未来4(指導者編)

今回は部活の指導者について。
部活における指導者はとても大事な存在である。
素晴らしい指導者もいれば、課題のある指導者もいるだろう。
問題は様々なので慎重に何回かに分けて書きたい。
ただ、原点は繰り返しになるが、学校の理念と部活動が、指導者が一致しているかどうか、リンクしているかどうかが大事だと思う。

現状の部活の深刻な問題は指導者の絶対数の不足である。
それに対し学校は無責任にも多くのサービス(部活)を提供しすぎている、もしくはあまりに提供できていない。
特定のスポーツをしたいという需要に対し供給が少ないこと、または多すぎることが現在の問題である。
では、どういったことが起きているか簡単に紹介しよう。

公立の中学校Aでは、サッカー好きの生徒がたくさんいる。
しかし、A中学ではサッカーを教えられる先生はいない。
そこで校長先生は、新任の美術教師Bさんにサッカー部顧問を命じた。
Bさんは、困り果ててしまった。
サッカーのルールさえ知らなければ、ボールすら蹴った事がない。
しかも土日は美術館へ足を運びたいのに、練習や試合に付き合わなければならない。
このようなケースは日本全国でどこでもある。
逆のパターンもたくさんある。
C先生は弓道を学生時代ずっと続けてきた。
今でも機会があれば行っている。
C先生は弓道を通して多くのことを学び、成長してきた。
C先生は、生徒にもそれらの楽しい思い出を体験してもらいたいと常々思っている。
しかし、学校には施設がなく、C先生は興味のない演劇部の顧問になってしまった。

ビジネスで最近「WIN・WIN」の関係が勝利の方程式とよく唱えられている。
残念ながら上述のように、「LOSE・LOSE」の状況がとても多い。
生徒は良き指導者のもと成長したい。
先生はさっぱりわからない分野の担当で、しかも多くの時間を拘束されてしまう。
教員免許は持っていないが、指導はしたい。
指導力はあるが、金銭的にきついので現状の仕事に従事するサラリーマン。
教わりたいスポーツがあるのに、習ったり参加できるスポーツ施設がない。
このようにミスマッチな関係は多々ある。

もちろん先生の方にも不幸はある。
前述の美術の先生は、美術の知識や素晴らしさを思う存分に生徒に伝えたいかもしれない。
C先生は弓道を通して生徒に貴重な人生経験をしてもらいたいと思っているかもしれない。
しかし残念ながら活躍の場が与えられていないかもしれない。

現状ではこのミスマッチを解消するのはなかなか難しい。
最近はコミュニティースクールの概念も少しずつ出てきたが、理想論ではあるものの、やはり「クラブ+部活」の新しい形こそが日本に適しているのではなかろうか???
学校で提供できるサービス−施設、グラウンド、教室等−は学校が提供し、地域が提供できるサービス−人材、知識、ノウハウ等−は、地域が提供する。
互いが補完関係にあること。そうすることが理想的ではなかろうか?

とは言うものの、地域密着のクラブとスポーツの融合はすぐにできるものではない。
もう一つの方法としては、登録制度の見直しである。
例えば先ほどの例でいくと、C先生が所属する山田1中(仮名)には、弓道の施設もなければ、弓道をやりたい生徒もほとんどいない(2人)。
ところが近隣の山田2中には、前任の校長が熱狂的な弓道好きだったために、立派な弓道施設はあるし、部員は8人だ。
校長が転任してしまったため、指導者がいなくて困り果てている。

このようなケースで理想としては、山田2中でC先生が部活を指導する。
山田1中の生徒も共に2中と部活に励む。
しかし、大会では同一チームとして参加することがほとんどのケースできない。
もちろん別々にエントリーして同一指導者が2チームを指導するわけには行かない。(直接対決の時などに混乱が生じるため)
ここが今の登録制度の限界である。

競技によっては柔軟な登録制度で、学生が思う存分打ち込める体制を作ってあげることが大事ではないだろうか?
様々なミスマッチを小さなレベルから解消できるような工夫が必要とされるのではなかろうか。
特に競技人口が少ないスポーツはなおさらである。山田1・2中連合で大会に参加できたら、いいこともあるかもしれない。

この件に関しては、様々な意見や状況があるかと思います。次回は違った観点から指導者について考えてみたいと思う。

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