「精密力」~日本再生のヒント~―全日本女子バレー32年ぶりメダル獲得の秘密

もしドラ監督版!?
なんだかとてもとても読みやすい本であった。
そしてとてもよくバレーボールの競技について理解し、日本がなぜ躍進できたかもとてもよくわかった。
筆者はとても説明上手なのだろう。
そしてあまりにもわかりやすく説明されたために、なんだかとてもわかってしまったかのような爽やかな気分になった。
不思議な爽快感が得られる一冊であった。

ではなぜ「もしドラ」を連想させられたかといえば、ランチェスター戦略で紹介されるような方法論が散りばめられているからだろう。
例をあげると、「弱者は強者と同じ土俵で戦わない」という定石があるが、眞鍋監督はこれを意識したのか、スパイクで1位を目指したりせずに、
「サーブレシーブ」
「サーブ」
「ディグ(スパイクレシーブ)」
「失点の少なさ」
で1位になることを目指した。
これぞまさに立派なランチェスター戦略だろう。

さらに、
「日本はいいアイデアを取り入れることがうまい国民といわれていますが、アイデアの発展の段階で周りが見えなくなり、「わが道を行く特異性」を発揮することも多い国民です。それが間違った方向に向かうことも少なくありません」
つまり日本はガラパゴス現象に陥りやすいことも見抜いている国際感覚。

もう言わずもがなのiPadを取り入れた先進性

男子、女子ならでは特性も理解してゆき、柔軟にシンプルに数字を用いて対応。そして過去の男子の戦い方を女子も踏襲していることに気付くと歴史をたどって選手に戦略の説明をしている。

そして国際公式球が変更になると、その癖を調べ尽くすためにミカサと東海大学工学部の研究室にスタッフを派遣し、ボールの特徴を調べる社会科見学とまさになんだか「もしドラ」の世界である。

そこには過去の日本代表にはつきものだった、根性や努力ややたら怒る監督像などウェットな泥臭いイメージは存在しない。
もちろん陰での選手やスタッフの努力は相当なものなのだろう。
しかし、根性とやたら長時間の練習だけでは突破できないのにも関わらず続けてきた事自体が、日本の「わが道を行く特異性」だということをこの監督は教えてくれたのかもしれない。
その点こそが読み終えた後の爽やかさをもたらしてくれているのかもしれない。
自主的に爽やかに探究心を持って努力することが、日本代表の活躍によって「わが道を行く特異性」として浸透するのならば良しとしたい、そう思える一冊だった。
そしてそんな監督を応援したくなる一冊でもあった。


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