Giant Killing: Memphis vs San Antonio

Memphis GrizzliesがSan Antonio Spursに4勝2敗で勝ち、史上4度目の第8シードが第1シードを敗る波乱を巻き起こした。
これはかなりの快挙だが、試合を見る限り必然のような気がする。

まず前提として、メンフィスは1月以降の成績がかなり良い。NBAの中でも上位5本の指に入るくらいの良さであったそうな。
勢いという点ならスパーズにけっして引きをとっていなかったのだ。

次に試合を見ての感想だが、ディフェンスの良さがとにかく目立つ。
順不同でポイントをまとめてみた。

*ローポストの攻防
 スパーズの攻め方のまずさはさておき、ダンカンがいるのにも関わらずローポストでの得点がほとんどない

*ピック&ロールのディフェンス
 横のずれが生じないため、スパーズはこの展開でほぼガードのジャンプシュートに終始していた。
ロールアウェイからのダンクももちろんほとんどない。

*ローテーションの早さ
 スパーズが"ド”フリーでシュートを放ったシーンもほぼ皆無。常にディフェンスと競っている状態のシュートがほとんど。

*身長+運動能力+意欲
 NBAの往年のディフェンスマンと言えば、身長+運動能力+意欲を持った選手が多い。スコッティーピッペン、ブルース・ボーエン、デニス・ロッドマン、ロン・アーテスト、コービー・ブライアントなどなど。
まだ知名度はさほどないものの、近い将来トニー・アレンが同じ文脈で語られることになるかもしれない。3ポジションを守れるだけの身長と高い運動能力、長い手足、そしてなによりも意欲、スタッツに表れない部分で彼が試合の流れを変えた事が何度もある。
その上にこのチームにはNBAの中でもトップディフェンダーとして名を馳せているバティエもいる。
この二人にマッチアップされたらなかなか点は取れない。
さらにその二人を突破したとしてもガソルやアーサーが控えている。好調な訳にはそれなりの原因があるのだ。

一方オフェンスだが、こちらは実際ちょっと粗いが、インサイドの強さがとにかく目立つ。
ランドルフとガソルが全ての中心となっている。ゲイが怪我で離脱した事により、チーム全体として何をすべきかクリアになった感じがする。
ゲイがいるとオフェンスの焦点が定まらず、コネリーのリード力ではまとまりに欠ける印象だったが、今はチーム全員まずはインサイドで攻める事が徹底されており、これが好結果につながっていると思う。

さてメンフィスは次にオクラホマと対戦する訳だが、マッチアップとしてはとにかく面白い。
デュラントにつくのはアレン、そしてバティエだろう。
どれだけ押さえ込む事ができるだろうか?

またオクラホマはメンフィスのようなチームとの対戦を想定してパーキンズをトレードで獲得した訳だが、ランドルフとガソルをどれだけ押さえ込むかも大きなポイントだ。
違いがでるとしたらPGのポジションだろう。
現状ウェストブルックとコネリーとでは格が違う。
今はここの力の差が勝負の分かれ目のような気がしている。

さて破れたスパーズだが、かなり残念な戦い方であった。
まずダンカンにローポストでボールを持たせる回数が少なすぎる。
確かにガソルのディフェンスに手こずり、自信を持って攻めれている感じがしなかった。
しかしダンカンがローポストで攻めれないとスパーズはかなり平凡なチームとなってしまう。
彼の自信のなさはかなり痛手だ。

そのためか終始ピックアンドロールで攻めていた訳だが、ここでもずれをつくることができず、ジャンプシュートで終始していた。
また、ジノブリは特別ピックアンドロールがうまい選手でもないと思うが、彼を活かす他の術も見当たらなかった。
単発の1対1では彼も状況を打開するには厳しい。
さらにガード陣が全体的に身長が低い点も気になる。

スパーズに決定的に足りないのは、3、4番のポジションで1対1が強い選手。それがジェファーソンということになるのだろうが、ガードのピックアンドロールをウィングで待っているだけでは彼の特徴は全く活かせない。であるならばKyle Korverのような身長のあるシューターの方が好ましいくらいだ。

ジノブリ、ジェファーソンを活かせず、ダンカンをなんとか再生させずピックアンドロールに終始した点で、ポポビッチの責任は重いと思う。
他にオフェンスの戦術はなかったのだろうか?
ボストンの試合を見ると、攻め方の多彩さに感心させられる。
スパーズからは効かない戦術をずっと行っている印象しか残らなかった。
このシリーズを見てウェスタンカンファレンスのチームは多くのヒントをもらったことだろう。
チームの核の年齢が高くなっている事も加えて、来年以降のスパーズは心配の種が多い。