廃校 再活用 ― その前に 東京のオリンピック招致について

東京都に地域密着型スポーツクラブを残すことをテーマにこのシリーズを書いているが、その前に一つ大きなムーブメントをすっかり忘れていた。
そう、東京に2016年オリンピックを招致する活動である。

 石原都知事の肝いりで、名古屋や大阪、福岡など様々な都市の希望に勝ち、立候補することになった東京都。
私も含めた都民がイマイチ盛り上がっていないなか、IOCからの任命に向けて先日大きく前進した。
都民が盛り上がっていない最も大きな点としては、お祭りが台風にようにはやってきて、消え去っていくだけだろう、という空気感があるのではないだろうか?
2002年で行われたサッカーワールドカップでは、新潟や大分にはサッカーのための大きな装置(ホームグラウンド)を残したが、そのほかの地区で何かが残ったかというと、全国的に見て「そう」といえる地区は少ないかもしれない。
東京も実はその一つである。
何せ試合がなかったのだから。
さすがに日本サッカー協会はその点に気づいていて、ワールドカップで得た利益を様々な地区や形で還元しているのだが、東京がその恩恵に授かっている例は聞かない。

 それでは東京がオリンピック招致に立候補することで、都民の生活レベルにプラスとなる変化を与える策を示しているかというと、残念ながらそれはない。
オフィシャルサイトに詳細が記載されているが、設立趣旨はIOCに向けた内容となっており、一般都民に向けたものはとにかく少ない。
この設立趣旨や招致プランを読んでいくと、語られている言葉は、世界平和やら環境やら、次世代を担う子供たちやら、都民にレガシーを残すやら曖昧な表現ばかり。
唯一あるのが、

世界で最も高齢化が進んだ国である日本だからこそできる、若者から高齢者まで全ての人々が楽しめるスポーツ社会の創造

こちらのみ。
具体的な策は何もなく、ここの点についてその後詳しく書かれてある様子がない。

 「持続可能な」という表現がでてくると、「持続可能なスポーツ」という方向にはいかず、「持続可能な社会や環境」になってしまう。
環境問題にIOCが興味を示しているのはわかるが、東京の環境汚染は別に世界に自慢できることでもなんでもないだろうから、矛盾を感じるのは私だけだろうか?
そして「既存の施設を最大限活用する」セールスポイントも、味の素スタジアムを一切使わない競技会場プランを見て、首をひねるばかりだ。
箱モノ行政の象徴のような活動を行うのではなく、ソフト面を大々的に訴えた展開は考えられないのだろうか?

 オリンピックから生まれたものが、都に残り、そこから持続可能なスポーツライフの提供を都にすることができれば、それは必ず地方にも還元される。
地方出身者が多い東京にて、地域密着型のスポーツクラブを経験することで、里帰りや帰省、もしくは地元に生活基盤を戻す時に、かならず活きる経験と知恵があるはずだ。
東京オリンピック招致委員会がすべきことは、東京に現在存在している全ての競技の全てのクラブに問いかけ、何が必要とされていて、何を残してもらいたいか?を考えつめることではないだろうか?
一過性のイベントが求められている時代ではないと思う。

持続可能なスポーツライフの提供=地域密着型スポーツクラブ
この定義が招致委員会に理解されていることを期待したい。
大きくなりすぎたオリンピックというイベントに、新たな意味づけをもたらすことによって、東京が勝利することを願おう。
それこそが、世界に示せるレガシーだと思う。

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