もしアーセナルにいたなら...

ナンバーの705号、ユーロ特集を読んでふと思うことがあった。
1987年生まれの才能溢れた選手の特集だったのだが、その中に輝かしい未来へと歩みだしている選手とは裏腹に、U−17世界選手権で華々しく活躍しながらも、その後数年伸びていない選手二人にも触れていた。
ポンゴルとルタレック、二人ともU-17世界選手権の得点王で、その後若くしてリバプールと契約し、ウリエからベニテス政権へと変わっていく中で輝きを失っていった選手として紹介されている。

 記事中彼らがもしアーセナルへ行ったら違っていただろうか?という問いに、「結果は違っていたはずだ」という答えが彼らを優勝に導いた監督、ジョダール氏から指摘されている。
なぜならイングランドには育成の伝統、環境、ノウハウがない上に、すぐに結果を求められる厳しい競争があるから。
そしてアーセン・ベンゲルには育成の仕事に就いた経験と知恵があり、クラブも若手が多く、リラックスできる環境があると。

 これを読んでとても気になったこと、そう、それは稲本潤一選手のことである。
もしあのままアーセナルに残っていたら?もしあのままベンゲルの下でプレイしていたら、ルタレックのようにならず、ナスリやベンゼマのようになれただろうか? 

 ポンゴルとルタレックはそうはいうものの、まだ若い。まだこれからぐっと伸びるかもしれない。
その点、稲本は年齢的に若手でなく、中堅の域に達している。本人との関係性の悪化をおそれるせいか、稲本がもしあのまま残っていたならば、今頃アンリとプレイしていましたね、今頃セスクとどんな連携をとっていたでしょうか?、チャンピオンズリーグの決勝に出ていたかもしれないですね?などという議論は日本のマスコミから一度も聞いたことがない。
きっと本人も心のどこかで引っかかっているかもしれない。だから触れてはいけない話題なのかもしれない。

 いまさら言っても仕方ないことは百も承知だが、育成もできる世界最高峰の指導者やクラブに巡り合った場合には、そこから離れない方がいいだろう。
そのことだけははっきりしているだろうし、これから海外移籍する若手の日本人は、そういうクラブにあざとく自分を売り込んでいくことが必要かもしれない。
そうすれば、本当にチャンピオンズ・リーグの決勝で活躍しているかもしれない。
よき人、よき環境に身をおいてこそ、次のステージにステップアップできるのは、どんな仕事だろうと同じかもしれない。