オシムの刻印

やはりオシムが気になる。そして彼の「知」がその後どこへ向かうかが気になる。

ナンバーの694号「オシムの刻印」を読むと、いろいろ面白い気になる点が浮かぶ。
まず何が気になるかといえば、評価が分かれる点が気になる。

人によってはオシムの選手交代は遅く、ある人によってはJリーグ時代思いっきりが良かったからアジアカップで判断するのは時期尚早と言う人もいる。
岡田監督にも同様な評価がされている。人によってはオーソドックス、人によっては采配が早くベンチワークに目を見張るものがあるそうだ。

ボールと人が動くというコンセプトも評価する人間もいれば、「手垢の付いた言い回し」と述べる人もいる。

後継者が岡田監督でよかったと述べる人もいれば、旧態依然と述べる人もいる。

この辺りの評価の分かれ目がおもしろく、後日どの解説者がどのように伝えていたか検証してみたいものだ。



おもしろかったもう一つの見方は、稲本選手による日本の試合の感想である。これをオシムジャパンの戦術と照らし合わせてみるとおもしろいものが見えてくる。

まずは彼の立ち上がりの悪さに関する意見である。
「初めからガンガンいく、というサッカーをしていないかも」
「しっかりボールをつなぐので」
「そこでボールをキープできればいいですけど」

ポゼッション重視の戦い方のため、縦への移動がおそい。その分相手に出足にガンガン来られると弱い。
大まかにこんなところだろうか。

しかし一方でこの号でオシムジャパンの戦術の系譜を見ると、

最初の半年はマンマークの守備と縦に速い攻撃が主体だった。

となっている。

しかし後期には、ゾーンの4バックとピッチの横幅を使ったポゼッションスタイルに変わっている。


稲本選手はオシムジャパン初期にチームに帯同していないから彼の発言もうなずける。彼はオシムジャパン後期に代表に参加した選手だから。
そして彼は、
「足もとにボールをもらう選手が多いから、そこでスピードが落ちるのはしょうがない部分はある。その分サイドで縦に行く選手がいるけれど、サイドで上下運動がなくなったとき、多少停滞する感じはするかな」
ともコメントしている。これでは前期の良さがなくなってしまったかのようなコメントである。

しかし裏を返せば、試合の流れに沿って日本は「ガンガンいくサッカー」とポゼッション型サッカーを使い分ければ最強なのではないだろうか?
ラグビージョン・カーワン日本代表監督は、日本の最大の弱点としてゲームマネージメントを挙げている。オシムは相反する戦術を取ることにより、最終的には選手にゲームマネージメントを落とし込もうとしていたのだろうか?

こうみると、オシム氏は一つのチームで「正・反・合」のプロセスを踏もうとしていたと思われる。
縦への速い攻撃→ポゼッション型→そしてその先は大久保や松井、前田をなどを呼んだあたりにオシムの「合」の手が見え隠れしていたのかもしれない。しかし次の一手を打つことなく交代してしまった中で、岡田監督はどのような手を打つのだろうか?ナンバー694号は、2009年の正月あたりに読み返すと、とてもおもしろいかもしれない。